なごや ページ18
突然世界が滅亡してから、数日が経った。
吸血鬼の貴族、第十三位始祖であるクローリー・ユースフォードは、使う人間のいなくなった建物を適当に拝借し、最近はそこを生活の拠点としていた。
今や世界中の吸血鬼が食料確保に大忙しで、それは彼も例外ではない。
「失礼します、第十三位始祖様。第七位始祖、フェリド・バートリー様から緊急の言伝です」
「ん〜?フェリド君の?なんでこう忙しい時にくるかなあ」
最近拠点としている場所、名古屋市役所の一室で人間を捕獲して回っている吸血鬼たちの報告を受けている最中、フェリドからの遣いの吸血鬼が一通の手紙を持って入ってきた。
彼が突然、こちらの都合の悪い時を見計らって用事をつけてくるのは珍しい事でもない。
手紙を受け取って、遣わされた吸血鬼を下がらせた。
しかし彼がわざわざ手紙を書くなんて珍しい。いつも、呼び出す時は用事も言わず、ただ「こい」だけなのに。
なにが書いてあるのかと、僕はシンプルな便箋を開けた。
『親愛なるクローリー・ユースフォードへ
元気にしてるかな?こちらは変わりなく、と言いたいところだけど、なんと僕もびっくりな大ニュースがある。
詳しいことは京都に来てから。君の恋人が待ってるよ。
第七位始祖フェリド・バートリー』
「…誰よ、恋人って」
短い文面の手紙は、それ以上の情報を寄越してはくれない。
恋人とやらに興味はないし、名古屋から京都まで行くのは面倒なのであまり乗り気ではないが…フェリドもびっくりな大ニュースとやらには、少し興味がある。
また面白いことでも見つけてきたのだろうか。退屈しのぎになるのなら、なんでもいいけど。
「しかし、今すぐは無理だな。ここの人間を粗方保護し終わったら…」
「クローリー様。フェリド様からはなんと?」
「ああ、ホーン」
ふむ、と手紙を見ながら頭に予定を組んでいると、部屋に第十七位始祖のホーン・スクルドが入ってきた。
どこかでフェリドから便りが届いたことを耳に挟んだらしい。ちょうどよかった。
「この辺りの人間を保護し終わるのにどれくらいかかる?」
「そうですね。…余裕を見て、二週間といったところでしょうか」
「なら、二週間後に僕は京都のサングィネムに向かう。把握しておいてくれ」
「承知いたしました」
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時