冷たい ページ20
平日の昼間だからか、電車の中はガラガラで空いていた。お茶子ちゃんはおそらく、一本前の電車で帰ってしまってるようだ。
爆豪くんは私が持っていた二つのうちの大きくて重い方を強引に奪い取って自分の膝に乗せた。
一度家に帰ったのか、爆豪くんは荷物を持っていない。とは言え私の荷物を持たせるのは悪いし返してもらおうと思ったけれど、その些細な優しさが嬉しくて私は小さくお礼を言った。
「それで爆豪くん、どうしてここにいるの？」
「あ？嫌なんか」
ガタガタと音がなる電車の中、この号車に私たち以外の人はいなかった。
そんな中で、爆豪くんが不機嫌そうに私を睨みつけた。私は慌てて言葉を訂正する。
「い、嫌じゃないけど…言ってくれればいいのに
と言うか、ベストジーニストさんの事務所ってガンヘッドさんのところから逆方向じゃ…」
「俺の勝手だろうが」
「………………」
…いつもの爆豪くんと言えばそうかもしれないけれど、でもやはり少し…
(…………冷たい…)
迷惑、かけたけれど。わかっているけど。
…でも、不機嫌な爆豪くんを見ているとやはり怒っているようで、寂しくなった。
「…………ごめんね」
そうだ。爆豪くんが来てくれたのだって、またどこかで私が倒れて迷惑をかけないために決まってる。
荷物を持ってくれたのだって、私がドジしないためだ。
じんわりと視界が歪んでいく。
気がつかれないように俯いた。
「……クソ、」
爆豪くんがぽそりと呟いた。
私の頭に爆豪くんの手が触れたかと思うと、怪我をしていない方の頭がこつりと爆豪くんの肩につく。
そして、爆豪くんが雑に私の前髪を掻き上げた。
「あっ…」
爆豪くんは片手で額の傷口をツーっ、となぞる。
そして苦虫を潰したような表情でパッと額と前髪から手を離した。
そしてその手で私の目に浮かぶ涙をぐいっと拭って、私から目をそらす。
「……………勝手に怪我、すんなや」
細い声で言うと、顔を隠すように私の肩に顔を埋めた。蜂蜜色の髪の毛がチクチクと首と頬に当たる。
私はどうしていいかわからなくて、言葉を発する事すらできなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 595人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
