やれる事 爆豪side ページ12
時刻は夜中の2時。
つい数分前、すっかり眠りについていた俺の携帯のモニターに【バカ】と表示されて電話に出ると、つっかえたような声が聞こえた。
最初は言葉が出てこないだけかと思っていたが、どうやらそんな単純なことでもないらしい。
数秒間そいつからの返事はなく、薄くため息をつくとブツブツと音がして、電話の相手が変わる。
『爆豪くん、麗日だけど、Aちゃんが高熱出ちゃって…』
思わず息が止まりそうになった。
だから具合が悪い時は休めとあれほど言ったのに、きっと無茶をしたに違いない。
こんな状態で風邪を引いてしまうんじゃ身体が持たない。自分の顔が歪むのがわかった。
『頭も怪我してて、熱のせいかすごい泣いちゃっててね、爆豪くんなら元気付けてあげれるかなって』
「泣いっ、」
さっき言葉を詰まらせたように声が聞こえたのは、泣いていたのか。
前に見たあいつの泣き顔を思い出す。
俺が泣いているわけでもないのに、妙に、息苦しくなった。
俺は冷静を装って、言葉を続ける。
「怪我の具合は」
『手当はしてあるから、大丈夫だよ
軽い怪我だから1週間もすれば傷も治るって』
その言葉に少し肩の力が抜けると、途端にふつふつと怒りが湧いてきた。
あれだけ言ったのに、どうしたってこいつは無茶をする。その「勝手」が腹立たしかった。
顔見知りが早死にして、なんも思わないほど俺は腐っちゃいない。
『爆豪くん！今は怒らないであげてね』
そんな俺を見越してか、そいつは慌てたように、なだめるようなトーンで言った。
もっとも、高熱で泣いてるあいつを目の前に怒鳴り散らすわけもない。
説教は帰ってからするとして、泣いているあいつをどうしたら寝かせられるだろうと考えた。
『………多分、不安とかそう言うのを抑えられなくなっちゃってるんじゃないかな』
そいつの思ってる「不安」と言うものにも、心当たりがなくもない。
これから訪れる【死】はもちろん、あいつの事だから、罪悪感や劣等感。そんなものだろう。
俺が言ってどうにかなる話でもない。
増してや、俺があいつの涙を止められるなんて思っちゃいない。
そんなものは俺の柄じゃない。
…でも、
あいつがあの時と同じように今も同じように泣いているのかと思うと、「やれる事なんてない」と言った数秒前の自分に少しだけ腹が立った。
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山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
