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中3の終わりに弟が産まれた。
小さな命はとても愛しくて
可愛くて可愛くて。
幸せそのものだった。
智くんはさほど行く気もなかった美大に行くことにした。それは家を出るためだってのは、その時は知らなかった。
智くんがこの家からいなくなっちゃったら、
私、なんとなく居場所がないなって思ったけど。
父も母も変わらず優しくて、きっと幸せな家族なんだろうけど。
智くんに出ていかないでって
お願いしてみよう
とか
私も一緒に連れて行ってって
お願いしてみようか
とか
どうしようもなく無力な子供の私は依存するしか生きていけない。悲しかった。
智くんの引越しの前の日の夜。
智くんが私の部屋にきた。
「A。1回しか聞かないよ。俺と一緒に来る？」
智くんの事が好きだった。
でもそれは
甘えることができる唯一の人だったから。
恋焦がれるのとも、家族愛とも違う。
同志のような、そんな感情だと思った。
思いたかったのかもしれない。
だから智くんが家を出ると言った時、
捨てられたみたいに感じたんだ。
その時の智くんの言葉が嬉しかった。
決断すらできないくらいに子供の私は
ただ泣いて
「行けない。」
としか答えられなかった。
智くんは泣きじゃくる私を抱きしめて
「Aが大人になるまで待てばよかったのかもなー。」
ごめんよ。
って小さな声で呟いて
私のおでこにキスをした。
びっくりしたけど
全然嫌じゃなくて
「はやく大人になんねーかなー。」
って笑った智くんが大好きだった。
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作者名：ハルヒ
| 作成日時：2020年2月15日 9時
