最愛 1 (S.S) (ページ31)

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日々の業務内容がどんどん深いものになってきた。

要求される内容も難しくなって
ほぼ一日デスクにいる毎日。

二宮主任は専務の海外出張について行ってて
今週いっぱいいないし。

パシリもできないと寂しいなって思う。
慣れって怖い。

デスク周りを片付けてたら松本課長が

「A、今日残業してくれない？」

「はい、大丈夫です。何をお手伝いしますか？」

「この新しい取引先のさ」

松本課長に頼まれた仕事がかなりの難題で

「足りない資料とか、わかんない事は橘に聞いてみて。」

って言われていたけど、

んー、それはなんだかなーって思って。

自分の感情を仕事に持ち込んではいけないけど

んー、でもなーって、イジイジする。

資料室に参考にできるものがあるかもしれないと思って、松本課長にひと言告げてから出向いた。

資料室は地下１階で、普段でも静かだけど
この時間は怖いくらいに誰もいない。

と、思ったら

誰かの話し声が聞こえる。

「ふふ、そんなに？」

「ああ、可愛いよ。」

「どれくらい？」

「今すぐ抱きあげて連れて帰りたいんだけど？」

「バカ(笑)」

「たしかにバカだよな(笑)」

「私も好きよ。」

「俺のが好きだわ！」

「ふふっ、なんか嬉しい。」

私は

私は...

1番聞きたくないことを聞いちゃった。

1番見たくないものを見ちゃった。

櫻井課長の甘い声、照れた顔。

はっきりと橘課長に気持ちを告げて

知りたくなかった。

聞きたくなかった。

ただ好きなだけでよかったのに。

時々笑顔くれるだけで幸せだったのに。

こんな場面に遭遇してしまったら
もう好きでいることが辛くなる。

叶うことがない恋でも
夢見てるだけでよかったのに。

現実はこんなにも私を打ち負かす。

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