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 だが、この家のお嬢様はなんたってわがままで横暴。

 たとえ相手が掃除終わりでヘトヘトな執事であろうと、自分の盾にすることに躊躇いはなかった。




「伊沢!これでもう貴方もお仕舞いよ!!」

「あっ、てぇめ!福良さん味方につけやがったな?!」

「当たり前でしょう!彼は(わたくし)の執事なのだから!」

「あのぅ、私を挟んででの痴話喧嘩は止めていただいてもよろしいでしょうか?」

「盾が喋るんじゃないわよ!!!」

「うちのお嬢様理不尽すぎでしょ」




 散々福良を盾として使っていたお嬢様だったが、伊沢も彼女も諦めが非常に悪い。

 形勢は不動。

 福良を柱のようにして追われ追いかけを続けた自由人お嬢様は、このままでは埒が明かないと判断し、意を決してまたもや廊下を駆け出した。



 不意打ちに戸惑いバランスを崩す伊沢。

 そしてそれを支える福良。


 二人はお嬢様が消えた廊下の先を見つめ、各々呆れ笑いや苦笑を顔に浮かべた。









 ―――一方その頃、福良の背後から無事に脱出したお嬢様は食堂に逃げ込んでいた。


 この屋敷の一番東に位置する食堂。

 もうこんな所まで来てしまったのか、と肩で息をするお嬢様はしっかり追っ手が来ていないことを確認すると、ほっと安堵のため息を吐き出した。





「まーた伊沢さんのお稽古から抜け出してきたんでしょ、お嬢様」

「渡辺。口の利き方には気を付けなさい。抜け出したのではなく端から予定にはなかったのです」

お嬢様の中では(・・・・・・・)、の話でしょ。貴方が逃げ出すとこっちにもあの人から『捕まえろ!!』って連絡来るんだから、とばっちり受ける前にさっさと戻ってよね」

「貴方が受けるとばっちりなんて(わたくし)の知ったことではありませんわ」

「なんて主だ。もっと執事大事にしろー」





 お嬢様が逃げ込んだ先の食堂には、窓際に設置された椅子に腰かけてコーヒーを嗜む執事の姿が一つ。



 彼の名は渡辺航平。

 ここへやって来てから今日まで、一日たりとも欠かさず廊下ですっ転んでいるせいか、今では完全にお嬢様になめ腐られている執事である。



 それを知っている渡辺もまた、執事という立場であるにも関わらず、公の場に出る時以外は、こうしてお嬢様に生意気な口を利いている。


 所謂お互い様な関係だ。








 ▶

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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます!この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです! (2021年3月30日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして(といっても覚えてないと思いますが…)今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか?紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか? (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです!お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます!普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます!ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白菜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年11月24日 19時

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