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 失敗ばかりとはいえ、俺もここで働いている執事の一人。

 お嬢様に呼び止められれば返事をするのが決まりだ。


 大人しく振り返ると、Aは俺をじっと……いや、俺より少し上をじっと見つめながら、綺麗に手入れをされた右手で小さな口を覆った。





「……ぷっ、貴方、パンツなんか頭に乗せてどこへ行くの?」

「……」





 俺は熱くなる顔を無視して頭に居座るパンツを鷲掴み、かごに乱暴に押し込んだ。



 ……落ち着け、俺。これは罠だ。

 反応したらおしまい。弄り倒される未来が見えている。


 冷静に、冷静に。

 深呼吸を一度挟み、俺は渾身の笑顔をAに振り撒いてやった。





「教えてくださりありがとうございます、お嬢様」

「声が震えてるわよ、貴方」





 お嬢様がなにか言っていたが、もう限界だと、俺は逃げるようにその場を後にする。



 長い廊下を進んだ先、曲がり角。

 Aからは丁度死角になる場所に入った瞬間、胸中を渦巻く恥ずかしさを吐き出すように、思いのまま喉がはち切れんばかりに叫んだ。





「くっっっっそおおおお!!!」





 今日ばかりはこの屋敷がアトラクション並みに広くて助かった。

 天井が高いためその分響きやすくはあるのだが、なにか小声で囁かれても遠ければ俺には聞こえない。

 傷をこれ以上抉らなくて済む。



 作戦一つ目から一体なんなんだ、やる気を出した瞬間不幸がいつもの倍になって帰ってきたじゃないか。

 今日の件でまたAに揺すられるネタが増えてしまった……もうマジ無理……リス化したい……どんぐり食べたい……はぁ。





「……あぁもう!嫌いになれないから余計ムカつく!マジで覚えてろよあいつ!」





 ―――普段の性格があんなんだからムカつくけど、今までの生活、お嬢様に助けられた場面は正直多い。




 ここに来て間もない頃、「 気に入らないから 」という理不尽な理由で先輩から陰湿な嫌がらせをされていたときも、真っ先に助けてくれたのはAだった。



 彼女は昔から正義感が強い子だった。

 俺より何歳も年下なのに、俺よりずっとしっかりしていて、女の子なのにそこら辺の男よりずっと勇敢で。









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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます!この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです! (2021年3月30日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして(といっても覚えてないと思いますが…)今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか?紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか? (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです!お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます!普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます!ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白菜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年11月24日 19時

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