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これ以上考えても良いことはない。
頭を振って例の空耳の件を振り払い、早速、お嬢様の命令通りズボンの裾をあげて海に足を入れる。
小さな砂浜だからか、基本観光客は居ない。
こうして良い歳の男と、有名な制服を身に付けた高校生が一緒に水浴びをしていても、誰も咎めはしない。
「うわっ、ちょ、なにすんのっ！」
「ふっふっふっ、やってやりましたわ」
「……ふーん？」
「アッ……」
服を着たまま水を掛け合っていれば、当たり前だがびしょ濡れになる。
俺が着込んでいるスーツもすっかり海水を吸い込んで重たくなっていた。
ここまで濡れてしまえば、あとはもう殆ど同じだ。
どうせなら、とAの手を掴んで一緒に海へ倒れ込めば、バシャーンと大きく水飛沫が上がって、そして二人分の笑い声もあがる。
これでもう俺達は同罪。
一緒に乾達に怒られようか、A。
「……こういうのも、たまには良いですわね」
「ふふっ、そうでしょう」
「えぇ。だって、なにも考えなくていいもの」
彼女が常日頃どんなことを考えて生きているのかは、他人の心情には敏感な俺でさえ分からない。
恐らく、考えていることが多すぎて、全てを読み取ることはできないのだと思う。
浜辺に頭をつけて、空を眺める。
母親が居ないあの屋敷では、なぜか自然と俺が母親のような役目を担っていた。
だから普段はAを叱ることの方が多くて、褒めるのは他の執事の役目なのだが……。
たまには、素直に褒めてあげて良いのかもしれない。
「お疲れ、A」
海から上半身を起こして、そっと湿った茶髪に手を乗せる。
そしてゆっくり撫でてやると、彼女は俺の手にまるで猫のように頭を押し付けてきた。
あざといなぁ。
こんなんだから、このお嬢様は男女問わず他人を虜にしてしまうんだろうな。
「貴方でも褒めてくださるのね」
「そりゃあね。俺も貴女がまだ幼い頃から見てきた一人ですから」
「ふふふっ、それもそうね」
よっこいしょ。
そう言って腕を振りかぶり俺の隣で起き上がったAの体を、後ろに倒れないよう咄嗟に支える。
これももう癖だ。執事としての。
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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます！この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです！ (2021年3月30日 17時) (
レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして（といっても覚えてないと思いますが…）今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか？紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか？ (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです！お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます！普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます！ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います！ (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
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