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……まぁ、今までの方が不思議だったというのが正しいのだと思うが。
誕生日は電話とケーキのみ。
クリスマスはプレゼントだけ。
お正月はお年玉と出先からの年賀状。
入学式の写真は、Aと俺達だけ。
これだけ寂しい思いをしていて、今まで文句一つ漏らさなかったことのほうが不思議なのだ。
「……あら、福良。こっちの道は間違いよ」
「いいえ。合ってますよ」
「そう？近道かなにかかしら」
ハンドルを家の方向とは逆の方向へ切って、アクセルを踏み込む。
Aの考えは合っている。
何故なら俺は意図して違う道を進んでいるのだから。
*
―――暫く車を走らせていると、後頭部から興奮の色を織り混ぜた声が飛んできた。
窓が降ろされる音と共に、雪崩れ込んでくる海の匂い。
助手席の窓からは、青々と輝く海原が地平線まで続いていた。
久々にこの海まで車を走らせたな。
執事の間では意外に知られている穴場だったりするのだが、とうとうお嬢様にも教える日が来た。
急な予定変更だったけど、本人は喜んでいるようだし、安心安心。
「福良！海よ、海！きれー！」
「お願いだから窓から落ちないでね」
「分かってるわよそれくらい！」
やっぱり、うちのお嬢様はこうでなくては。
海だけで年相応にはしゃぐ姿が、胸を張って歩く姿よりも……いや、なによりも美しい。
自然豊かなこの場所に不釣り合いな黒い高級車を路肩に停めると、俺が降りるより早くAが飛び出す。
砂浜に綺麗な革製の靴を脱ぎ捨て、校章の入った靴下も放り、海に駆け出すA。
俺が追い付いた頃には、彼女は既に制服をびちゃびちゃに濡らしていた。
まったく。そんなに濡らして、怒られるのは俺だというのに。
……なんて言いながら、怒れない俺も俺か。
「福良ー！貴方も来なさい！」
「酷い命令ですね。こっちは帰りの運転もあるんですよ？」
「最悪伊沢を呼ぶわ」
「鬼かな？」
「はっくしゅっ!」
「あれ、風邪ですか?」
「かもしんねぇ」
どこかで伊沢のくしゃみが聞こえた気がしたが、多分空耳だろう。
てかそうでなければホラーが苦手な俺は非常に困る。
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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます！この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです！ (2021年3月30日 17時) (
レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして（といっても覚えてないと思いますが…）今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか？紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか？ (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです！お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます！普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます！ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います！ (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
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