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到達できぬ高みを見たとき人は涙を流す ニ ページ10

『幕府は僕を舐めているのか……?それともただの親善試合か?』
『……九兵衛。敵は相対し剣を交えてみなければわからんぞ』

 敏木斎は何かを考えるように顎に手を当てて言った。

『失礼致します』

 女中が部屋の外から声をかけた。

『幕府の使者、AA様がお見えです』
『入っていいぞ』

 輿矩の許可を得て、女中は襖を開けて部屋に入る。
 それに続いて、Aが黒い髪を揺らして中に入ってくる。

 瞬きで目が伏せられ、もう一度開いた赤い瞳は九兵衛へと向いた。

『!』

 彼女の姿に全員が驚いた。
 女好きの南戸だけでなく、そこにいる皆が彼女に見惚れてしまったのである。

『お初にお目にかかります。幕府より柳生九兵衛様との剣術試合を拝命しました、AAと申します。本日はよろしくお願い致します』

 Aは頭を下げて仰々しく挨拶した後、顔を上げてにっこりと微笑んだ。

『ッ!』

 その笑みが向けられる九兵衛は、なぜか衝動的に目をそらしてしまった。

『柳生、九兵衛だ。こちらこそよろしく頼む』

 九兵衛が目をそらして辿々(たどたど)しく言うもので、Aは少し驚き不思議そうにした。

 一通りの出迎えを終え、九兵衛達は道場に来た。

 道場の中央で九兵衛とAが少し距離を取って正面に対峙する。

 二人の手にあるのは、真剣だった。

 今回の試合の審判を担う東城が口を開く。

『これより、柳生九兵衛様とAA様の剣術試合を執り行います。勝敗はどちらかが致命傷を与え得る状況になったときに下します。両者、構え』

『……始める前に一つ言っておきますが、相手が女であろうと僕は手加減などしませんよ』

 九兵衛が真剣を構え、しっかりと目の前のAを見据える。
 Aは少し驚きつつも、フッと笑った。

『ふふっ、構いません。元よりそのつもりで、今日はここに来たのですから』

 彼女は鞘から刀を抜き構える。

 ピリッとした空気が流れ、周りで見ている敏木斎たちにも緊迫に飲まれる。

『――始め!!』

 見合う間もなく、東城の合図と共に二人とも足を前に踏み込んだ。

 ガキンと甲高い金属音が鳴り響く。
 二人の剣が打ち合って、変わらぬ表情のAに対して九兵衛は目を見開いた。

(何だこの圧は……)

 それは彼が今まで経験したことのない剣だった。

 剣というよりは、斧のような
 剣であるならば、武神のような

 Aの細い腕からは想像できないものだった。

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作品ジャンル:アニメ
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刹那*桜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!! (2022年12月27日 20時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメ失礼します!! めっちゃ面白いです!! これからも頑張ってください!  (2022年12月26日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - あたりんさん» ありがとうございます!! (2022年11月20日 0時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年11月14日 16時) (レス) id: c0f0373936 (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - 花香さん» コメントありがとうございます!9個もあって長いですなか一気に読んでいただきありがとうございます!!わりと読みづらい所もあるかと思いますが好みと言ってもらえてとても嬉しいです!!(;ω;) (2022年11月7日 23時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年11月7日 0時

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