この世にただ一つしかない財宝には鷹が何匹も群がる 一 ページ30
「ウーさみィ。ったくよー……大晦日だってのに赤丸ジャンプで男と張り合うとは……」
一月一日。新年を迎えた、おめでたい一日目に服部は文句を垂れた。
昨日の大晦日、彼は銀時と一つ残ったジャンプを取り合ってボロボロになっていた。
結局それは目的のジャンプとはまた違う物だったが。
冬の道を、白い息を吐きながら体を縮めて歩く。
「くそ、新年早々ついてねーな」
「あれ、全蔵君」
「んあ？」
服部は名前を呼ばれて振り返った。
そこには冬着に白いダッフルコートを着たAがいて。
「Aじゃねーか。何でこんなところいんだ？」
「全蔵君こそ何でそんなボロボロなの」
全蔵は顔や手に絆創膏やガーゼを貼りまくっていて、Aはジト目で彼を見た。
「これは、アレだよ。この世にただ一つしかない財宝を求めて色々男らしく戦ってたんだよ」
「そんな大海賊時代じゃないよ今。全蔵君はどちらかといえば痔の実を抱えてる人間じゃん」
Aは全蔵に近づいて軽く傷の様子を見る。
「ガーゼや絆創膏は定期的に取って新しいのに変えないとダメだよ」
座って、と近くにあった石板の上に全蔵を座らせる。
Aは常備していた絆創膏を出し手当てする。
「……お前、絆創膏なんか携帯してるんだな」
「まあ、色々と怪我しちゃうこと多いから」
不器用なんだよねーと笑う。
Aがそうやって頻繁に怪我する原因を服部は知っていた。
「お前、まだあの癖治ってないのか。前から言ってるだろ、誰かを守るために刃物を素手で受け止めたりはするなって」
「う……ごめんね、とっさの反応でやっちゃうことが多くて」
服部はため息をついて、手当てを終えたAの手を掴む。
「初めて会った時から変わんねーな」
数年前に将軍の護衛として雇われた彼女を快く思わない者たちが、彼女の暗殺を企てて、さっちゃんがそれを妨害しようとした。
当時失敗したさっちゃんを助けるために動いた元御庭番衆に彼もいた。
その時に初めて会って、服部はAの強さを目にしている。
そしてその強さがある中でも、Aは自分の肉体を酷使し軽く扱う傾向にあることを知った。
それから長い間、腐れ縁で関わってきた服部はAの自己犠牲的な守護を良しとしていない。
だからこそ、心配で目が離せなくなっていた。
「俺は女なら醜女が好きなんだがな……お前と出会ってから例外というものを知ったわ」
「え……？」
Aは彼の言葉に驚く。
この世にただ一つしかない財宝には鷹が何匹も群がる ニ 終→←記憶喪失なんてモンは治さなくても都合よく教えればいいのさ 十一 終
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
刹那＊桜(プロフ) - noche/ノーチェさん» ありがとうございます！！ そう言っていただけでめちゃくちゃ嬉しいです！ これからも頑張っていきます(⸝ᵕᴗᵕ⸝⸝) (2022年9月13日 21時) (
レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
noche/ノーチェ(プロフ) - 続編おめでとうございます！ずっと前にお気に入り等々は済ましていたのですがコメントは初めてさせていただきます。いつもこの作品を見るために占ツクを開いているくらいとてもこの作品が好きです。これからも愛読させて頂きます！これからも頑張ってください! (2022年9月13日 20時) (レス) id: 958fbd2e0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：刹那＊桜 | 作成日時：2022年9月13日 20時
