オタク、笑む。 ページ33
下を向いてただ重力のままに涙が落ちていくのを感じていると、部屋の向こうからキシキシと廊下を歩く音が聞こえた。
ああ、そういえば。
私、川に落ちたはずなのに、布団の中にいるってことは、誰かが助けてくれた....ってことだよね。
お礼、しなきゃ。
あの時、地面に打ち付けられたせいか、ズキズキと痛む体を起こし、ゆっくりと扉へと向かう。
伸ばした足や、恐らく着替えさせて貰った浅葱色の浴衣の下から、白い包帯が覗いた。
ああ、何から何まで申し訳ない。
命を助けて貰い、しかも手当までしてくれるなんて。
人の優しさに触れて、少し笑みがこぼれた。
きっと、凄く優しい人たちだ。
どんどん近づいてくる足音が扉の前に来る前に、私は自分で扉を開いた。
「わ!」
「.............??!?!?!!?!っ”、?!!?!!!?!!」
目の前の光景に思わず後退る。
扉を開いた先。
口をすぼめて曲げたような表情の男....いや、面をつけた男が立っていた。
やばい、目の前の光景に思わず固まり、3秒ほど遅れて反応してしまった....!
「ああ!良かった、目を覚ましたんですね!」
「えっ、あ、はい....あの、本当にありがとうございました.....!」
ぺこりと腰を折る。
ひょっとこの面をつけた男は、そんな私の体を労るかのように肩に手を乗せて布団に入るよう促す。
「いやはや、村の麓にある川を貴方が流れてきた時は驚きましたよ!雨が降っていたのもあって流れが早く、もう駄目かと思いました...。」
「....あの、もう死んでるとは思わなかったんですか?」
「例え死んでいたとしても、ずっと冷たい川の中にいるのはあまりに可愛そうだと思って.....ふふ、余計なお世話でしたか?」
「まさか!!助けていただいて、本当にありがとうございました」
ひょっとこの男は、持ってきた氷水で布を濡らし、私のおでこにそれを置いてくれた。
「(冷たくて気持ちいい....)」
ほう、と息を漏らす。
それに男は、肩を揺らして笑った。
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Stella.Ms.an - うう、 (2022年6月28日 19時) (レス) @page36 id: 44b715b917 (このIDを非表示/違反報告)
Stella.Ms.an - アッ、すみません取り乱してしまいましたいまのはわすれてくれますよねそうですよねニッコリ (2022年6月28日 19時) (レス) @page36 id: 44b715b917 (このIDを非表示/違反報告)
マイケル(プロフ) - はるさん» ありがとうございます!のんびりとですが更新していきますので、どうぞお付き合いください。景虎には醜く退場して貰うつもりなので、お楽しみに! (2020年3月21日 0時) (レス) id: ab4a955ce1 (このIDを非表示/違反報告)
マイケル(プロフ) - 雨傘さん» コメントありがとうございます!じょ、女装?!でも顔は普通に男前なので、似合ってしまいそうなのが更に腹立たしいところですね....!! (2020年3月21日 0時) (レス) id: ab4a955ce1 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 更新頑張って下さい!そして景虎さんに悪の撤退を! (2020年3月14日 16時) (レス) id: de479982fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シレア | 作成日時:2019年7月22日 22時