君だって、１人の人間だから。 ページ21
□神代慈羽(言紡様宅)
学園にて知り合った。身長差のある梓は、慈羽の職柄か、子供扱いされる事が多い。然し気に障る扱い方ではなく、慈羽の元々もつ優しい雰囲気やオーラが、梓をあたたかく包み込んでいるのだろう。梓に対する喋り方も、信者の子供達に対しての様に丸い口調になるらしく、梓は何度もその職業病に違和感を覚えてきた。
梓にとって慈羽は、希望の道を照らしてくれる存在だが、慈羽が赦された事はあるのだろうか。疑問に思った梓は、素直にそれを言葉にした。そして態度に示した。慈羽は最初自身が引っ張らなくては、導かなくてはと思っていた梓の成長に驚き、「逆転しちゃったな」と、笑いながら言葉を零したそうだ。そして、慈羽の本心を梓は聞いた。吐露したその想いを、梓は受け止めた。きっと慈羽にとって梓は、ありのままの自分で息を吐ける存在なのだろう。
梓の人を疑わない純粋を通り越した無防備さに、慈羽は危機感を感じているそうで、「コロシアイ関係なくちょっとは人の事疑ったりした方がいいと思うよ？ちょっと心配になってくる」と、頬をもにもにと触る微笑ましい場面も見られたそう。梓は自覚が無い故に戸惑っていたが、慈羽の気持ちはきちんと受け取っている筈だ。移動時に猫が伸びる様な持ち方をされる事には少し疑問符を浮かべるそうだが。嫌な気持ちでは無いそう。
「は、初め、まして…っ！ぼ、僕、古倉梓、と、申します…！…神代、慈羽、さん…。成程、誠、円、教…？という、教団の、きょ、教祖様…！なのですね…！」
「…へ、あ、移動、ですか…？わ、判りました、直ぐに…っ……？…あ、あの…これは一体…？な、何故僕は、猫さんがの、伸びる様な、持ち方をされている、のでしょうか…？」
「神代さん、もう安心して下さい。僕はもう２度と、絶望に負けたりなんてしません。絶対、皆さんと脱出してやるんです。…ですから、神代さんも諦めないで下さい。僕が導きますから。…な、なんて…おお烏滸がましい、です、よね…！ぼ、僕に出来る事なんて、無いに等しい、のに…。…え、『成長したね』…。…はい。僕、もう２度と迷いません。負けません」
「…ですから…その、神代さんの想い、も、き、聞かせて欲しい…です。…その、神代さんも、我慢ばかりしてるのでは…と、お、思いまして…。……はい。…はい。…大丈夫、ですよ。僕が、支えになりますから」
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