希望ｖｓ絶望 (ページ3)

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家族によって立ち直った男の話。ページ3

【半生】

次男として古倉家に生を受け、兄から非常に可愛がられて育った。ふわふわな髪は兄も同じで、２人でアニメのヒーローキャラの衣装を着たり、夏休みに父の仕事場で遊んだり等、至って普通の人生を送ってきた。

然し、彼が９歳の頃、父が仕事中に予期せぬ事故に遭い、呆気なく亡くなった。夏休みの事で、丁度兄はトイレに行っており、帰ってきた兄は、地面に倒れており、大量の血を流している父を目撃した。すぐ様兄は弟、即ち梓を探した。梓は父が死ぬ様子を一部始終見届けており、咄嗟に兄が彼の目と耳を塞ぐものの、周囲の叫び声、父の頭から血を流している姿が焼き付いてしまい、発狂し暴れる。兄が必死に何とか落ち着かせるものの、人の死を初めて目の前にしたという衝撃と絶望に、心が壊れそうになる。

そんな彼を見た母は、数少ない休みを練って、妹２人の世話を兄に任せ、２人きりでの旅行をする。母は数多の仕事を熟す故か、行き交う人々と直ぐに打ち解け、地元民とも直ぐに仲良くなり、楽しく会話をしていた。その時に彼は、母の絶えない笑顔に疑問を感じた。。夫が居なくなり、未亡人となった母。本当なら自分より泣きたい筈なのに。そんな母は、彼にこう言った。

「あの人は、何においても命を優先する人だったわ。亡くなったあの人の死や命を軽んじている訳じゃないの。でもね、あの人なら屹度、自分の生きれなかった人生分も、後悔しず生き抜いて欲しいと言う筈よ」

その言葉を聞き、彼は心から救われた気がした。彼は人一倍心優しい性格故に、人の死に敏感で、かつ思いっきり悲しむ人物。母の強さと、死者を思いやった上での切り替えに、尊敬の意を抱いたという。旅行から帰ると、母は直ぐに仕事をしに家を出て行った。彼はその後も人見知りの性格は変わらなかったものの、この経験を胸に深く刻む事となる。

そして、希望ヶ峰学園への入学が一般から抽選で選ばれた事により決まり、彼は家族に大いに喜ばれ、笑顔で見送られた。彼は入学式の朝、料理上手な兄が作った大好きなココアブラウニーを食べ、希望ヶ峰学園へ足を踏み入れる。

希望ヶ峰学園。そこは希望と絶望が共存し、軈て絶望に侵食される生徒達のコロシアイの舞台。

彼は、かつての経験を心と胸に刻み、どんな悪人だとしても、亡くなった人の分まで生きて欲しいという思いを抱えている。

出来る事なら、否、必ず。皆で此処から出て、互いを受け入れ、希望を手にしよう。そんな絵空事とも言える事を、切に。