２人で、否、６人で。 ページ19
□森羅楓(あこ様宅)
幼い頃に出会っており、学園にて再会した。梓の父は大工業に従事していたのだが、その作業で使う機械を造っていたのが楓だった。楓が機械のメンテナンスに訪れた際に、梓と梓の兄は彼女に出会い、交流を深めていった。何でも、楓が交通事故に遭いかけた際に、梓の父が助けたそうで、それから楓は、梓の父を命の恩人として尊敬する様になったそう。そこにシンパシーを感じた梓は、楓と父についてよく話す様になった。楓からお菓子を貰う事もあったそうだ。
然し、無情にも神は時を呼ぶ。
父が不慮の事故で亡くなった。梓も楓も、父の死を痛く悲しみ、一時期疎遠となってしまった。梓は精神科に通う事になり、楓は、悔しさや悲しさ、自身への非難から、一層機械へのめり込む様になった。そんな事態を見ていた兄は、２人をもう一度会わせる事を決意。梓は申し訳なさそうにする楓に対し、「そんな事は全く無い」と言い切り、再スタートを共に切った。
楓にとって、梓は初めて出来た友達らしく、古倉家に森羅姉弟が泊まりに来る事も多々有る。面倒見たがり屋な兄の好き嫌い克服メニューに苦しむ森羅姉弟や妹達を見て、他人よりは好き嫌いの少ない梓が優しい笑みを浮かべる事も。そんな関係性から察せられる通り、楓は梓や梓の兄を［男性］ではなく［家族］として認識してくれている節がある。
複雑な家庭同士だからだろうか。それとも縁からだろうか。少なくとも、両者が幸せな関係を築いていた事は言うまでもない。
「あ…え、えっと、初めまして…っ！ぼ、僕、古倉梓と申します…っ！…ええと、御名前は…森羅、楓、さん…。…も、もしかして、その髪色、その目、機械からして…ひ、人違いならば申し訳無いのですが…。………楓、ちゃん、ですか…？」
「楓ちゃんは本当に機械が大好きなんだね。…へっ？あ、否、その…楓ちゃん、機械と向き合ってる時、その、凄く楽しそうにしてる、から…。…へぇ、新作の機械なんだ。…『出来たら１番に見せてあげる』…ほ、本当に…？…嬉しくない訳ないよ！楽しみに待ってるね…！」
「…へ、僕と楓ちゃんが、つ、付きっ……！？ちち、違いますよ！？楓ちゃ……し、森羅さんとは、ち小さい頃からの仲で…っ」
「『何で苗字呼びに戻ったの』…ご、御免ね……っ！あ、あの、別に、名前呼びとか、いい今の距離感が嫌になったとか、そ、そういう訳じゃないんだよっ…！」
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