6.理由 ページ6
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私の言葉に、電球から目を離した彼と目が合った。長い睫毛に乗った霜が、瞬きによって、しゅんと、消える。
永瀬「え?なんで?」
「なんで?なんでって・・・そういうものやろ、普通」
永瀬「そうなん?」
「多分?」
想定外の反応に、何か間違ったことを言ったのかと思った。てっきり、クリスマスに備えての彼女だと思ってたから、ちょっとびっくりした。
永瀬「・・・へぇ、初耳」
「ていうか、じゃあ何で付き合ったん?」
永瀬「なんとなく」
「何それ、もうー、教えてくれるぐらいええやん」
唇を尖らせて廉を見ると、その顔からは、何の感情も見受けられなくて。なんだか、調子が狂ってしまう。
下心ありきで、こんな質問をしたから尚更。廉に心が見透かされてそうで、不安になる。
永瀬「えー・・・なんか、告られたから、」
「わ、なんか軽い、今のめっちゃ軽い!」
永瀬「なんやねんお前、何目線なん」
あしらうような返事をして、廉がくしゃ、と笑った。どうしようもないやつ、に向けるような、そんな笑い方。
告られたから付き合ったなんて、嘘ばかり。
そんな簡単な性格なら、とうの昔に彼女のひとりやふたりくらい、出来ていたはず。
知っているんだ、本当は廉が、かなりモテること。あまり表面に出さないから、見落としそうになるけど。
廉が、カッコイイなんて。
そんなこと、私が1番知っている。
大体、そんな答えじゃ困るんだ。
もし、もしも。
私の方が早く、告白していたら、なんて。未練がましく、廉への想いを馳せてしまうから。
口先だけでもいい。
好きだから、って一言くらい言ってくれたほうが、よっぽど楽になるのに。
「・・・名前、なんて言うの?」
永瀬「・・・や、言わねえし」
「えー、ケチ」
永瀬「ケチでけっこー」
「かわいい?てか何歳?高校は?」
食い気味に言葉を浴びせると、また、迷惑そうな顔をした廉に、肩を軽く押されて、二、三歩、後ろに引き下がる。
永瀬「近いし。あと、質問責めやめろ」
「ええやん、廉のケチ!ドケチ!
それなら、うちがもし彼氏できても教えてやんないで?」
僅かに首を傾げて言うと、一瞬。本当に一瞬だけ。目を丸くした廉。でも、その瞳はすぐに細められて。いつものクシャクシャな笑顔が作られた。
永瀬「Aに彼氏?できるわけないやろ、ばーか」
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紀衣 - 夏(なの)さん» わーー!待っていて下さってありがとうございます!コメントすごく嬉しいです!訳あってゆるゆる更新になりますが見届けていただけたら嬉しいです…(>_<) (2018年12月12日 23時) (レス) id: afbfeebc90 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 待ってました。久しぶりの更新とてもうれしいです!! (2018年11月18日 13時) (レス) id: d826207ec4 (このIDを非表示/違反報告)
紀衣(プロフ) - 夏(なの)さん» たくさん感想ありがとうございます!すごく嬉しいです!切なさだったり、廉くんのリアルさ(笑)だったり、気をつけながら書いていた部分に気づいて頂いてすごく有難いです!拙い言葉ばかりですがこれからも応援して下さると嬉しいです!マフラーもぜひ買ってください!笑 (2018年1月14日 17時) (レス) id: cdb8449478 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - メインの廉くんが、リアルで凄いと思います!廉くんの細かい所まで表現されているし、それに出てくるボキャブラリーが半端じゃないです。とても読みやすくて…!なんかマフラー欲しくなってきました(笑)更新楽しみです。頑張って下さい! (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 初コメ失礼します!前作が気になって読ませて頂いて…とてもドンピシャリで!!Twitterもフォローさせて頂きました!最初はあいくるしい。って束縛とか、そういう系なのかな?と思っていましたが切ないお話で………きゅんきゅんと言うよりも染みると言うか…↑に続く (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紀衣 | 作成日時:2017年12月30日 20時