42.気づかい ページ42
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平野「俺な。さっき、Aが、廉くん?だっけ?に抱えられてるとこ、見てて」
「・・・っえ、」
平野「ごめん、別に覗き見するつもりなかってん、ただ、」
そこまで言っておいて。うやむやに視線を逸らした先輩。
先輩は、何も悪くないのに。
ただ、私が、告白して、振られて。
ただ、それだけ。
そう思えたら、どれだけ楽になることか。
見られていた恥ずかしさよりも、自分の惨めさが改めて、私の背後へとのしかかったような気がして、顔を上げることができなかった。
平野先輩は、そんな私の傷を抉らないように、気遣っているんだ、きっと。
その証拠に、漏らした息ですら、くすぐったくなるような、優しさを含んでいる。
平野「なんか、すっごい。
・・・Aに、優しくしてあげたい、って思った」
そうやって、真っ直ぐに私を見据える先輩は。
もう、十分すぎるくらい。穏やかで、暖かくて。
気を抜けば、すがってしまいそうなくらい、優しいのに。
私は、平野先輩に、これ以上を与えてもらえるような、そんな女の子じゃないのに。
どうして。
そんなに、私を見てくれるのだろう。
平野「訳が分からない、って顔してる」
ふ、と笑って覗き込んだ先輩の、大きな目に移った私は、ひどく、凍りついた表情をしていて。慌てて、力んだ眉間を緩めた。
「・・・どうして、私なんか、」
平野「どうして?」
再び、膝へと落とした視線と連動して、背中の後ろへと流れていた髪が、はらはらと視界を覆った。
まるで、割れ物でも扱うみたいに、髪の先にそっと触れた先輩の指先が、私の世界を明るくする。
太くて、ごつごつとしていて。平野先輩の指は、平野先輩のものじゃないみたいに、男らしいんだ。
平野「言うたやん。
好きだから。Aのこと」
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紀衣 - 夏(なの)さん» わーー!待っていて下さってありがとうございます!コメントすごく嬉しいです!訳あってゆるゆる更新になりますが見届けていただけたら嬉しいです…(>_<) (2018年12月12日 23時) (レス) id: afbfeebc90 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 待ってました。久しぶりの更新とてもうれしいです!! (2018年11月18日 13時) (レス) id: d826207ec4 (このIDを非表示/違反報告)
紀衣(プロフ) - 夏(なの)さん» たくさん感想ありがとうございます!すごく嬉しいです!切なさだったり、廉くんのリアルさ(笑)だったり、気をつけながら書いていた部分に気づいて頂いてすごく有難いです!拙い言葉ばかりですがこれからも応援して下さると嬉しいです!マフラーもぜひ買ってください!笑 (2018年1月14日 17時) (レス) id: cdb8449478 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - メインの廉くんが、リアルで凄いと思います!廉くんの細かい所まで表現されているし、それに出てくるボキャブラリーが半端じゃないです。とても読みやすくて…!なんかマフラー欲しくなってきました(笑)更新楽しみです。頑張って下さい! (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 初コメ失礼します!前作が気になって読ませて頂いて…とてもドンピシャリで!!Twitterもフォローさせて頂きました!最初はあいくるしい。って束縛とか、そういう系なのかな?と思っていましたが切ないお話で………きゅんきゅんと言うよりも染みると言うか…↑に続く (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紀衣 | 作成日時:2017年12月30日 20時