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37.ダイヤモンドダスト ページ37










平野「A?」








ローファーを履いた平野先輩が、棚の間から顔を覗かせて、はっと顔を上げた。





平野「授業終わっちゃうで?」





入り口から一目で分かる位置に掛けられた、シンプルな時計を指差して平野先輩が首を傾ける。



この時間が終わったら、次の授業まで10分程の休憩がある。教室移動のため動き出す生徒、先生。

体育を終え、着替えを済ませた廉や、なっちゃん、そして、河田さんの顔が頭をよぎった。




別に、私が急ぐことなんてさらさらないのに。
むしろ私は、その授業を受けるべき立場なのに。



どうしてか。
爪先は、素直すぎるくらいまっすぐに、平野先輩の方へと向いていた。







平野「ほんとのサボリ魔になっちゃったね」







頬を綻ばせた平野先輩が、優しくて、ずるくて。


どこで、どんな道を辿れば。
こんなに柔らかな男の子が出来上がるのだろうかと、不思議で仕方なかった。





再び差し出された先輩の手のひらは。


とろけそうなくらい、とびきりに甘い瞳とか。
春の日の、午後の日差しのような、間延びした口調とか。


それらからは想像できないくらい、大きくて、かくばっていて。





もしも、私が私じゃなかったら。
あんな、叶う見込みもない、意地悪な恋なんか捨てて、平野先輩の温かなその渦のなかに飛び込んでしまえるのに。
なんて、自分勝手にも、そんなことを思ってしまった。





そもそも、こんなことを考えてしまうような私なんて、平野先輩はもちろん、廉ですら、選んでくれる訳がないのに。








「うち、早退なんて初めてですよ」







ましてやサボリだなんて、って。
苦笑いすると、先輩がははって、楽しそうに声を上げる。







平野「じゃあ、Aのはじめて。1個頂くわ」

「えー。なんかあれですね、その言い方」

平野「んー?」

「・・・いや、別に」








溶けかけの雪が、太陽に照らされて、キラキラと光る。

何て言うんだっけ、こういうの。


そうだ、ダイヤモンドダスト。
よく晴れた日の、特別な現象。


太陽の光をたっぷり蓄えた細氷に、思わず目を細めた。






Aちゃん。
そう、呟いた声と同時に、握られた指先に力がこもった気がした。




振り向いた先輩ですら、ダイヤモンドの一部みたいに、眩しい。









平野「俺、欲しくなっちゃった。キミのこと」

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設定タグ:永瀬廉 , 平野紫耀 , Mr.KING   
作品ジャンル:恋愛
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紀衣 - 夏(なの)さん» わーー!待っていて下さってありがとうございます!コメントすごく嬉しいです!訳あってゆるゆる更新になりますが見届けていただけたら嬉しいです…(>_<) (2018年12月12日 23時) (レス) id: afbfeebc90 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 待ってました。久しぶりの更新とてもうれしいです!! (2018年11月18日 13時) (レス) id: d826207ec4 (このIDを非表示/違反報告)
紀衣(プロフ) - 夏(なの)さん» たくさん感想ありがとうございます!すごく嬉しいです!切なさだったり、廉くんのリアルさ(笑)だったり、気をつけながら書いていた部分に気づいて頂いてすごく有難いです!拙い言葉ばかりですがこれからも応援して下さると嬉しいです!マフラーもぜひ買ってください!笑 (2018年1月14日 17時) (レス) id: cdb8449478 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - メインの廉くんが、リアルで凄いと思います!廉くんの細かい所まで表現されているし、それに出てくるボキャブラリーが半端じゃないです。とても読みやすくて…!なんかマフラー欲しくなってきました(笑)更新楽しみです。頑張って下さい! (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 初コメ失礼します!前作が気になって読ませて頂いて…とてもドンピシャリで!!Twitterもフォローさせて頂きました!最初はあいくるしい。って束縛とか、そういう系なのかな?と思っていましたが切ないお話で………きゅんきゅんと言うよりも染みると言うか…↑に続く (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紀衣 | 作成日時:2017年12月30日 20時

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