34.シンパシー ページ34
.
平野「つーかまえた」
不意に、両腕を掴まれて。鼻まで隠していた布団が重力ともに上半身を滑っていった。
拘束された両腕が、途方に暮れてベッドの上にに落ちる。
どさり、って音は。
いつか好奇心で見た、そーいう漫画そのもののようで。状況も読めないまま、顔ばかりが熱くなる。
「ちょ、先輩、」
平野「んー?」
「ここ・・・どこだと思って、」
平野「あー、大丈夫やで。今、先生居らんし」
「そういう問題じゃ・・・、」
平野「じゃあ、どういう問題?」
くぐ、と力を込めて、押し付けられた手首。耳元に顔を埋められて、開き切った指が、ぴくりと反応する。
平野「・・・もしかして、こういう問題?」
ふ、と擽りを受けたような感覚に、背筋が一瞬で伸びる。
子供の頃、友達同士でよくやった遊び。それと、なんの違いもない行為の筈なのに、とてつもなく、いけないことをしている気分になるのは、無駄に広がった知識のせいだろうか。
「せん、ぱい!」
緩んだ指先に力を込めて、思い切り腕を振ると、拘束は意外にも容易く解けて。
先輩はというと。
いつものゆるゆるな笑顔が私を見下ろしている。
平野「ふは、ごめん。びびった?」
「び、びびった・・・っていうか、な、え、」
動揺を隠し切れず、というより、隠す気なんてさらさらないのだけど。とにかく、頭の中は真っ白で。
平野先輩、そのものが、よくわからない。
ぱちぱちと、視界を改める行為は、多分、私の癖だ。
平野「・・・なかったことにしたい、って感じやね」
再度、覗き込まれた瞳に、心まで見透かされて、返す言葉もない。
平野「・・・ま、ええけど。おもろいもん見れたし」
「ば、バカにしないでください・・・、」
平野「んー?」
・・・完全にからかわれた。
楽しそうな笑顔。今に始まったことではない、そうだ、先輩はこういう人なのだ。
勝手に気持ちを見透かしといて。
放っといてなんかくれないし、かと言って、優しくなんてしてくれない。
先輩にとっての私は、ただの、暇潰し。
いい鴨。
それでも。
今は。そんな先輩と居るほうが、ずっとずっと、心地いい。
ぐしゃぐしゃ丸めた思いを、広げるよりは、よっぽど楽なんだ。
743人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紀衣 - 夏(なの)さん» わーー!待っていて下さってありがとうございます!コメントすごく嬉しいです!訳あってゆるゆる更新になりますが見届けていただけたら嬉しいです…(>_<) (2018年12月12日 23時) (レス) id: afbfeebc90 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 待ってました。久しぶりの更新とてもうれしいです!! (2018年11月18日 13時) (レス) id: d826207ec4 (このIDを非表示/違反報告)
紀衣(プロフ) - 夏(なの)さん» たくさん感想ありがとうございます!すごく嬉しいです!切なさだったり、廉くんのリアルさ(笑)だったり、気をつけながら書いていた部分に気づいて頂いてすごく有難いです!拙い言葉ばかりですがこれからも応援して下さると嬉しいです!マフラーもぜひ買ってください!笑 (2018年1月14日 17時) (レス) id: cdb8449478 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - メインの廉くんが、リアルで凄いと思います!廉くんの細かい所まで表現されているし、それに出てくるボキャブラリーが半端じゃないです。とても読みやすくて…!なんかマフラー欲しくなってきました(笑)更新楽しみです。頑張って下さい! (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 初コメ失礼します!前作が気になって読ませて頂いて…とてもドンピシャリで!!Twitterもフォローさせて頂きました!最初はあいくるしい。って束縛とか、そういう系なのかな?と思っていましたが切ないお話で………きゅんきゅんと言うよりも染みると言うか…↑に続く (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紀衣 | 作成日時:2017年12月30日 20時