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33名無しの君へ、 ページ34

「財前君?」




透き通った声が、俺の耳を掠める。




奪ってしまおうか、そう考えることさえできんほど、彼女は幸せそうで、俺には遠い。





「優しそうな人で、よかったやん!」




久しぶりに張り上げた声は、情けないくらい震えていた。



かろうじて告げた言葉はそれで精一杯やった。





「ありがとう」





きっと桜井は、照れたように笑っとるんやろうな。



嬉しそうな声を、掻き消すように俺も笑った。




2人はそのまま車に乗り込む。



きっと、もう会うことはないやろ。





目から溢れるそれは、地面を濡らすのをやめようとはしない。






「おそいわ……ほんまっ」





“ありがとう”最後の声が耳について離れない。


とっさに目を閉じて、掌で顔を覆った。




指の隙間から、止まらない涙はあふれ出る。






「はっ…馬鹿やな、俺っ」





吐き出すような笑みが、悲しみを膨張させる。



痛いわ、ほんま。


心臓が痛い。







『ピアス、落としたよ?』




「好きや、A…っ」








なぁ、諦めるなんて無理やろ?



どんないなことをしても、無理やわ。



今でも彼女の声が残っとる…っ。








『そのピアス、よく似合ってたのに…』



「好きや、好きやっ…」






俺、ほんま、アホ…っ。


口にすることのできなかった言葉を、何度も何度も吐き出す。







『まぁ、でもきっといいやつ見つかるよ!』



「好き、なんや…」





なんて、脆いんやろ。



俺も、感情も、地面も。





簡単に崩れる。







『あのね、財前君、……好きです』







名無しさん、アンタは酷い人や。















名無しの君へ、



愛する感情を植えつけるなら、忘れる方法を教えてください。









fin.

あとがき1→←32なぁ



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SHINO(プロフ) - 優雨さん» ありがとうございます。本当に嬉しいです。私の作品なんかで好きになっていただけたなら本望です。ありがとうございます! (2015年8月17日 22時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - ルイさん» ありがとうございます。そうですね、やはりこれが私らしいのでご容赦ください。笑 ハッピーエンドを素敵にかけるよう、努めます。 (2015年8月17日 22時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 巌陰美園さん» ありがとうございます。そんな風に読んでいただけて、すごく光栄です。ありがとうございます。駄作というより、黒歴史ですね。笑 あの頃を思い出すと、作品を消したくなりますw (2015年8月17日 22時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - ドラゴンZさん» ありがとうございます。そういっていただけて嬉しいです!ファンなんてとんでもないですが、とても幸せです。ありがとうございます。 (2015年8月17日 22時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
優雨(プロフ) - はじめまして。幸村くんの時といい、とても感動しました!特に財前くんは好きなので!!前まで、切ない感じの話は苦手だったけど、今回すごく好きになりました!! (2015年5月4日 20時) (レス) id: 7a5228ac60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SHINO | 作成日時:2013年11月16日 10時

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