【幸村精市】大嫌いな君へ、

３３大嫌いな君へ、 ページ34

「ごめんね、精市」






早く行きなよ、アイツのところに。



俺をおいて、早くいきなよ。





そう思って、顔に力を入れ、彼女の顔を最後に瞳に写す。







「…っ」






なんで…っ。



なんで、なんで…っ。







「私なんかを愛してくれて、ありがとう…っ」







彼女は、静かに去っていった。




敵わないよ、本当に。







「ばれてる、みたいだね…っ」







彼女が残していったのは、少しの涙と、…１つの笑みだった。



皮肉なことにその笑みは、今までで見た中で一番、綺麗だった。






「…っ」





こみ上げる感情が、涙となってあふれ出す。



とっさに、口元を塞いだ。







「嫌い、だ…っ」






君なんか、







「大嫌いだよ…っ」









早く、俺の中から消えてくれ。



笑顔なんて、残さないでくれ。



最後の最後まで、俺の心を奪わないでくれ。









だって俺は、俺は君が、







「大嫌いなんだから…っ」







嘘だ…。



全部、嘘だよ。






だって俺が、君を嫌いになれるはずないんだろう？









・









大嫌いな君へ、




俺はね、これから先も君を嫌いにはなれないよ。









fin.

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