【幸村精市】大嫌いな君へ、

１２恐怖 ページ13

病気になったとき、思ってた。



どうして俺なんだろう、って。





あのときの俺はテニスが全てで、テニスが出来なくなるのが死ぬよりも怖かった。






入院してるときは毎日寝れずに、一人泣いて、きつく握り締めたこぶしには爪が突き刺さって血が滲んで…。



そんな光景を、今でも夢で見る。





だけど、必ず君が助けてくれた。



手を伸ばして、引き上げてくれた。






いつしか俺は、テニスじゃなくてAが全てになってたんだ。







「A…、俺はね」







怖い、全てだからこそ怖い。



テニスができなくなった時よりずっと怖い。





君が、消えてしまうのは怖いんだよ。






君が消えたら俺はどうすればいいのかな？







「俺はね…君が「精市！」」






『好きだよ』その言葉は声にはならなかった。


遮られた言葉は行き場をなくし、俺の中をさまよう。





その言葉は、いったいどこに行くのかな…。



たどり着けない言葉は、どこに捨てられるんだろう。






でも、わかるのは、君には届かないということ。



君はもう、手を伸ばしてくれないということ。







なんで、かな。



なんでこうなったんだろう。





俺が君を好きになったから？



俺が、君に出会ってしまったから？






…できることなら、もう一度やり直したいよ。

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