story31 ページ32
渋々教室へと戻った私は、再び視線を浴びながらも、窓の外を眺めた。
視線は感じるけど、誰も話しかけてはこない。
壮絶な嫌がらせをされるかと身構えていたけど、跡部のおかげなのか、このクラスが変わっているのか、今のところ何もない。
「咲間さん」
柔らかな声が耳を撫でる。
そっと振り向くと、高身長のわりに可愛らしい顔立ちをした銀髪の男がいた。
「あなたが鳳長太郎?」
なんとなく、跡部が言っていた男が彼のような気がした。
優しい顔の裏に、熱い何かを感じる強い瞳。
綺麗な目だな、と静かに思った。
「そうだよ、よろしくね」
よろしく、か。
「跡部の命令だからって無理して話しかけなくていいのよ?」
彼はきっと人気者。
周りの視線でなんとなくわかる。
その彼が咲間の私と一緒にいれば株が下がるでしょう?
「確かに跡部さんに言われたけど、前から咲間さんと話してみたかったんだ」
その言葉の嘘を見抜こうと、ジッと瞳を見つめてみたけれど、嘘は見つからなかった。
彼は本心で言ってる。
「私と話しても楽しくないわよ?」
彼はきっと頭がいい。
目立つように話しかけているのも、たくさんの視線を集めているのも、全部わざとだ。
「そんなことないよ。
咲間さんとは気が合いそうなんだ」
無邪気、気弱、優しい。
こんな言葉が自ずと浮かんでくるけれど、少しだけ闇も見える。
なんとなく、跡部が彼をすすめる理由がわかった気がした。
「よろしく、鳳長太郎」
「長太郎でいいよ。
だから俺も名前で呼んでいいかな?」
「わかった、長太郎」
私がこんなに人と距離を詰めることはないけど彼と仲良くなれば何かを手に入れられるような気がした。
何かを…。
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SHINO(プロフ) - 菫-sumire-さん» ありがとうございます。こんな私に憧れる要素があるか、わかりませんが、ありがたいです。本当に未熟で、読みにくい部分もあるかと思いますが、皆様に納得していただけるように頑張りたいと思います。とても温かいコメントをありがとうございました。 (2016年2月7日 13時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 梅田さん» ありがとうございます。キャラの特徴や性格は私なりに研究していたつもりです。なのでそう言っていただけると本当に嬉しいです。氷帝にとって跡部さんは絶対的な存在だと思うのでそれを表現できていてよかったです。素敵なコメントをありがとうございました。 (2016年2月7日 13時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
菫-sumire-(プロフ) - SHINOさんの小説、影から読ませていただいておりました。憧れるところなんて正直言い切れません.....他のどの作品も楽しみにしています。 (2016年2月7日 12時) (レス) id: dbfe85220f (このIDを非表示/違反報告)
梅田(プロフ) - それぞれのキャラの特徴を良く捉えた上での跡部至上主義な発言がとても好きです。とりあえずの完結、おめでとうございます。続編も楽しみにしてます。SHINOさんの作品ですから、SHINOさんのペースで進めてください。一ファンとして影ながら応援しております。 (2016年2月7日 11時) (レス) id: 78d0f2e1a4 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - ゆっきーさん» 返事がおくれてすみません!続きを楽しみにしていただけるのは、作者として本当に嬉しいです。ワクワクドキドキしていただける展開にしていきますので、よろしくお願いします。素敵なコメントをありがとうございました。がんばります! (2016年1月25日 22時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SHINO | 作成日時:2014年7月26日 13時