【氷帝】冷血ロボット

story18 ページ19

「悪かったな。
けど岳人の言うとおりだぜ」


ようやく視界が定まったところで、落ちついた声の主を見上げる。

傷だらけ、という印象しか持てない。

彼も、テニス部だろう。


「貴方達には関係ないでしょ」


私が誰か、知ってるくせに。

放っておけばよかったのよ。


「助けてやったのにっ！なんだよお前！」


赤髪の少年が今にも飛びかかってきそうな勢いで吠えている。


「岳人うるせぇよ。
俺は宍戸亮、そんでこいつが向日岳人、テニス部の３年だ」

「３年？その赤髪の子も？」

「ああ、そうだぜ」


いやいや、ありえない。

多く見積もっても中１くらいでしょう？


「クソクソっ！お前今俺のことちびって思っただろ！」


……めんどくさい。

はぁ、とため息を吐いた。


「それじゃ、さよなら」


もう二度と話す事はないでしょう。

そう心の中で呟いて、背中を向けた。

すると、


「お前、跡部のお気に入りだろ」


宍戸亮の声に、私の足は止まってしまった。

そしてそっと、振り向く。


「跡部なんかに気に入られるなんてお前、運悪いな！」


ははっと歯を見せて笑う向日岳人。

やっぱり、跡部景吾の知り合いか…。


「跡部景吾もそうだけど、貴方達も私に近づかないほうがいいわよ」


ため息を吐くようにそう言った。

この２人はきっと私を知っているだろうし。
私に近づいてもメリットなんてないもの。


「あー、お前咲間だったっけ。
でも俺達は庶民だしな。
そういう金持ちのいざこざとかよくわかんねぇし」

「……っ」


宍戸亮の言葉に、静かに息を呑む。


「それに何より。
跡部がお前を認めたんだろ？
だったら、一般生徒の俺達もお前を認めるしかねぇんだよ」


何よ、それ。

意味がわからない。

いくら跡部景吾でも、咲間は敵という暗黙の了解を覆すことなんてできっこないでしょう。

揺るがない想いを瞳に宿す２人に私の指先は静かに揺れる。





「「氷帝にとって、跡部は絶対だ」」




そう告げた２人の顔は真剣すぎて、その視線を浴びるのが私は少し怖くなった。




.

story19→←story17

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す