幼馴染武勇伝【幸村様誕生記念企画】追加SS

幼馴染20 ページ20

「せ、いち？」




掠れた声が耳を掠める。


幻聴だ。

だってありえない。


それか、幼馴染として、ということだろう。



ゆっくりと、振り向いた。




「俺も好きだ」


「……っ」



何言ってんの、こいつ。



「ほんと、Aって鈍いよね
あんなに苛めてあげたのに」


「だ、だって」



言い返す気力さえ、もうない。



「馬鹿じゃないの
俺はずっとA一筋だけど」


「嘘だっ」



貶されてるとか、どうでもいい。


だって、さすがに意図が掴めない。

こんな冗談、言ってどうするの？



「はぁ、もうめんどくさい」



向き合って、ぎゅっと抱きしめられた。

驚いて目を見張ると、
精市の耳が赤く染まっているのに気づいた。



「おふざけって言ったじゃん」



体は精市を受け入れるけど、
私自身は、冗談としか思えない。

だって、精市は散々私をいじめてきた。


ありえない、ありえない。



「あんなの嘘に決まってるだろ？
Aが泣くから……」


「でも……っ」


「うるさいっ」




私をきつく抱きしめる精市の腕に、力がこもった。



ますます密着するせいで、
お互いの心臓の音がよく聞こえる。



精市の心臓の音は、私の倍速かった。






もう、いいや。









「私は3ミリ好き」









妄想ハゲ。


アンタなんか、大好きだ。

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