幼馴染武勇伝【幸村様誕生記念企画】追加SS

幼馴染15 ページ15

次の日も、その次の日も、
私は精市の家に行かなくなった。


そして、行かなくなって1週間目となる今日。




精市がいないのを念入りに確認して、
学校へと足をすすめた。




「ねぇ、なんで避けてるの？」



聞きなれた声が耳をなでる。


どうしよう。

どんな顔すればいいのか分からない。


どうせ精市は覚えてないんだろう。



それなのに、勝手に意識するとか……。



でも無理なものは無理だし。

毒を吐ける自信がない。



鞄を抱え、早足に歩きだす。





精市の顔なんか、見れるわけない。






「おーい」



何その声。

馬鹿みたいに間の抜けた声。


人の気も知らずに……。



今のこいつを立海の女子達に見せてやりたい。




「A」



名前を呼ぶな、キモい。




｢ぐえっ｣



急に襟首を掴まれて、変な声が出る。

すぐにパッと離されるが、気持ち悪い。



くっそぉ、精市の野郎。


振り向いて殴りたいのを必死にこらえる。



何が何でも、目を合わせたくないんだ。

そんな想いもあっけなく、



「俺がキスしたから？」


「は……？」




驚きのあまり反射的に、振り向いてしまう。


え？は？なんで？



「意識、あったの？」



私の口から、震えた声が零れ落ちた。

だが精市はそれには答えず、笑みを浮かべた。


その笑顔は、肯定。

そのくらい、わかる。




「最低っ！」



もう、文句も出てこない。


また、嫌がらせか。

私の事からかって、楽しいわけ？


自分は女慣れしてるから、
キスの1つくらいどうでもいいって？




そんなに私が嫌いか。






悔しくて、悔しくて、涙が零れた。




いや違う、本当は。









―――――――――――――悲しかった。

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