This CRAZY loVe 2

73 F side ページ23

休憩終わりの前にAさんはお手洗いへと立ったようだった



追いかけて個室の前で待つ



俺がいると思わなかったのだろう
一瞬驚いた目をした


俺はそんなことは構わず手を引っ張って引き寄せていた


抱きしめたい………


「ちょっと……ここじゃ……」


Aさんが小声でそう言うけど
俺を押した手に力なんてほとんど入ってはいなかった


ギリギリの理性で抑えて一瞬だけギュッと抱きしめて
すぐに彼女を解放した


「……どしたの？」


困ったように笑うAさん



…………いつもだ



困りながらもきちんと応えてくれる





いつも彼女には甘えてしまう

気を張らなくてもいい居心地の良さを感じていた

かっこつけなくてもいい

弱い俺も受け入れてくれる


きっとそんなところに惹かれたんだろうと思う



だけど彼女にはもう相手がいた



幸せならそれでいいのに





そうじゃなさそうだった………





それなら俺が少しでも笑顔にしてあげたいと思った






………たとえそれが自分勝手なことであっても






『さっきの………。』



「ん？」



『旦那さんの前で着るの？』



「え……。」



また困ったように笑って



「着ないよー。
　そんなタイミングないって……知ってるでしょ？」



完全に俺のヤキモチだった


相手がいるのは分かっているくせに
想像するだけでも嫌気がさすくらいだった




『じゃ、今度俺の前で着てね。』


「えぇっ？！」


ふざけてそう言うと
Aさんは狼狽えた



俺のこと甘やかすからついいじめたくなる




『ほんとは紺がよかったけど……
　黒でも十分セクシーだからあれでいいよ。』



それだけ言ってAさんを置いて持ち場に戻ることにした




チラッと振り返ると
困ったような怒ったような顔をして俺を睨んでいたから
可愛くて笑ってしまった

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