【名探偵コナン】不老不死になっていた件について。【男主】

FILE.30 ページ34

キッド様は俺に「可哀想だ」と言ってから自分の口を抑えてびっくりした顔をしていた。どうやら無意識に言ってしまっていたようだ。

あのキッド様が、俺の大好きなキッド様が俺を心配してくれたのは嬉しいとは思うけれど、でも。

でも、同情された事が俺のプライドを傷付けたみたい。

「なんで、そんな事言うの」

キッド様の顔が見れない。

なんだか、目の前がどんどん真っ黒に染まっていく。下半身から少しずつぬるま湯に浸かっているような感覚が俺の身体を支配していき、顔を下から上へ向けると顔が真っ黒く塗り潰されている男と女がいた。

遠くで鈴の音が聞こえる。
チリン、チリン、と少しずつ自分に近付いてくるような。

なんだ、これ。この鈴の音はなに？目の前の男と女は誰？

あたまが、いたい。

今は鈴の音が耳元で聞こえる。

遠くでコナンくんが俺を呼んでる。


目の前の男が俺に言った。

「可哀想な子だ」

顔は黒く塗り潰されて表情は見えないけれど、少し嘲笑っている様に感じた。

「会社の名前に泥を塗るなんて信じられないわ」

女の方が俺を見下して言った。


またチリン、と鈴の音が耳元で鳴る。
その直後、何処かで聞いたことがあるような、懐かしいと感じる男性の声が脳内に響いた。

『全てを恨め』

『お前は死ぬべき人間だ』

頭が割れるように痛い。ガンガンとまるでハンマーで殴られているように。

その言葉だけが俺の中に染み渡っていく。頭の中はぐちゃぐちゃで体は言うことを聞かない。

右足が前へと動く。どうやら俺の体は前へと歩き出しているみたい。

コナンくんが横から出てきた。焦った様に何度も俺の名前を呼んでいる。

「おいA！！なにやってる！そこから降りろ！！」

俺は気付いたらキッド様を押しのけ屋上のフェンスの外側に立っていた。
そりゃあコナンくんが焦って俺を止めようとするわけだ。

でもコナンくん、俺、身体が上手く動かないんだ

どんどんあの声に支配されて行くんだ。





こんな事今までの世界では無かったのに

これ以上足が前に出ればこの建物から落ちる



気付けばスカッと俺の右足が宙を切っていた

「あ」

FILE.31→←FILE.29 ―side.KID

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す