赤と黒のLiberations6

【嘘】6　★ ページ6

★羽生サイド

耳元で鳴り続けるコールは、もう何度目か数えられなくなっていて、次鳴る度に切ろうかどうしようか迷う自分に若干嫌気がさす。

「マナーモードなのかな。」

いい加減出ろよと心の中で毒づいていると、不意にぷちっと回線が切り替わる音がして、コールがやんだ。

「あ、もしもし、A？」

繋がった！
嬉しさのあまり、少し張りのある声で話しかけると、想像していた声とは違う声で返事が返ってきて一気に困惑する。

『あ、Aじゃないです。』

「へ…。」

男の声…。
心当たりがないので、Aのお父さんかなと思ったけど、どこか違う。この声は確か…。

『えと、田中さん、ですよね。』

「コ…あ、はい。」

思わず手で自分の口を押さえる。
やべ、思わずコウくん！って叫ぶところだった。

でもなぜ彼がAの携帯に…？
疑問に思いつつも、それより今は初対面の振りをしないと何か感付かれるかもしれないので、咄嗟に羽生結弦っぽくない声色を作る。

「え、ええっと…。」

田中としての面識がない中、色々知ってたらおかしいのでなんて言ったらいいか迷っていると、先に向こうから発せられたその一言に空気が変わる。

『Aの、彼氏ですか？』

…なんで知ってるんだ。
田中という名前は携帯に表示されているだけで、付き合ってるかどうかなんて分からないはず。
友達かもしれないのに、なぜ彼氏だなんて…。

「そうですけど…あの…。」

疑心暗鬼になりながらも、一応肯定する。

『Aから聞いたんです。』

「あー…なるほど。」

Aが言ったのか。
どんな流れかは分からないけど、こないだ無理やりキスされた相手によく言えたな。

つかさっきも思ったけど、Aの携帯にコウくんが出るってなんだ。
一緒にいるのなら、あいつはどこで何してる。

「あの、Aは…。」

今お前と話したいんじゃない。すぐ代われ。と心の中で念じると、今度は妙な言葉が返ってきた。

『あ、すみません。A今隣で寝てるんです。』

「…は？」

隣で…寝てる？

「言ってる意味がよくわかんないんですけど。」

寝てるということは、どこかの部屋とかか…。
こうして会話をする中で、相手が比較的静かな場所にいることは分かるけど…。

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