赤と黒のLiberations2

【Ｔシャツ】5　★ ページ5

「効果は１ヶ月だから、トロントの住所を教えてくれたらまた送るけど？」

「本当に？！それ助かる〜。…あ、待って。俺その頃また日本に帰ってくるんだよ。」

「そうなの？」

「うん、アイスショーの予定が入ってるから。」

花山さんの申し出をありがたいと思いつつも、シーズンオフの仕事が入っていたことを思い出す。

わざわざ空輸する時間ももったいないし、効果の長さにも影響があるから、出来れば手渡しでもらった方がいいと思ったのだ。

「いつからショーがあるの？」

「５月の下旬頃かな。毎年日本で１ヶ月くらいやってる。」

本当は俺の出演はまだ発表になってないけど、決定はしているし、花山さんにだけは伝えておいても問題ないだろう。

「またここへ寄るの？」

「うん。聞いて驚け。今回は仙台でもショーやるから。」

そうなのだ。やっと今回、念願の仙台公演が…といっても利府だけど、東北でショーの開催が決定したのだ。

嬉しくて嬉しくて、絶対に成功させなきゃと、今から気合いが入りまくっている。

「そっか。じゃあまたその時に連絡ちょうだいね。」

「日本にはショーの前からいるんだけど、仙台は５月の最終の週末だったから。１ヶ月と少しあるな…。」

まぁそれくらいなんとか九尾を抑えられるだろう。

「じゃあそのタイミングでお守りを用意しておくね。」

「うん。頼むわ。」

優しいな。
俺のせいで自分の髪が無くなるのに、文句のも一つも言わない。
それどころか、進んで提供してくれて…。

花山さんこそ、八百万の神さまみたいだなと思った。





その後、そろそろおいとましようと、午前中のうちに実家へ帰ることにした。
拝殿で、神主である花山さんのお父さんに特別にお祓いもしてもらって。

九尾を退治できた訳じゃないけど、力が幾分抑えられたのか、車に乗り込む足取りも軽い！

「A、安全運転でね。」

「わかってるよ。」

お母さんもわざわざ見送ってくださって、花山家は本当に優しい方々だなと、花山さんが運転席に乗るのを待っていると…。

「あれ？」

誰かがふと怪訝な声を上げたかと思ったら、見たことのある軽自動車が、砂利の敷き詰められている敷地内へと入ってきた。

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