赤と黒のLiberations2

【ホテル】7　☆ ページ31

☆主人公サイド

どうしよう…。
羽生くんからまさかこんなお願いをされるとは思わなかった。

言いたいことはわかる。
服を脱ぐのは、なるべく直接ふれ合う範囲を多く作ることによって、九尾の逃げ場をなくそうという理由なのだと。

でも私は、この方法を受け入れられないでいる。

元々、男性とそんな経験は一度もないし、ましてや相手はあの羽生くんだ。
スケートのためならなんでもやる彼の性格がだんだん分かってきて、正直今とても…迷っている。

言われた瞬間は帰ると口走ってしまったものの、やっぱり九尾にとり憑かれた彼をこのまま放っておくことは出来ない。

「……。」

ちらっと羽生くんを見ると、携帯を手に時々笑ったりしている。
そういえばまどかが、羽生くんはエゴサーチをよくしていると言ってたから、ファンの呟きでも見ているのかな。

ファンか…。
私にはファンがいる気持ちは分からない。
でも、応えたいという彼の気持ちは理解できる。

ショーだってまだまだ続くのだ。
スケーターとして、ベストなコンディションで挑みたいに決まってる。

私が数分我慢すれば、もしかしたら羽生くんの中の九尾を退治することができるかもしれないのだ。
藁をもつかむような話だけど、試す価値はあるのだろう。でも…。

羽生くんがベッドの壁にもたれたまま目を閉じた。
その姿をしばらく見ていると、規則正しい息づかいが始まって…。

眠ったのかな。そりゃあれだけ動いたら疲れるよね。

私は彼をそのままにして、時間が過ぎるのを待つ。
この件に関しては、どうしても心の準備が必要だった。





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