【ホテル】6 ★ ページ30
譲歩案を提示して反応を伺う。
すると少し落ち着きを取り戻してくれたのか、花山さんが深呼吸した。
「羽生くんは…。」
「俺も下着だけは履く。」
さすがにそっちに目隠しをされたら、九尾退治に支障が出るからそれは無理だけど。
「……。」
「花山さん。これはお祓いだから。」
決して男女のやましい行為ではないことを切々と説く。
「お祓い…。」
「俺は、次の開催地である神戸のみなさんに、最高の演技を見せたい。そのためには、花山さんの協力がどうしても必要なんだよ。」
肩に手を置いて、分かるでしょ。と最終的な同意を求める。つか分かれ!
「そんなにスケートが…ショーが大事なの…。」
「あぁ大事だよ。ファンの皆さんに喜んでもらいたいから。」
そこは即答する。
ファンは何よりも尊くて、守りたい存在であり、自分のスケートのモチベーションだから。
「でも…。」
「今度の神戸公演の初日も、誰かにとっての一生に一度のショーかも知れない。」
「……。」
「安倍晴明なんでしょ。」
苦悩する花山さんを真っ直ぐに見つめて、再び押しの一言を告げる。
自分だけが俺の中の九尾を退治できるのだとうことを理解させながら。
「本当に羽生くんの頭の中はスケートでいっぱいなんだね…。」
ふと、ため息と共に彼女が力なく呟く。
自分のことを理解してもらおうなんて思ってない。ただ、そんな人間がいることを知ってて欲しい。
「何してても、一周まわってスケートのことになるくらい大切だから。」
本当に、自分の人生スケートだけあればいいと思ってるから。
「少し…時間くれる…。」
「どれくらい?」
「1時間くらい…。」
1時間…。
「いいよ。あ、テレビでもつける?」
確かに心の準備も必要だ。俺は気分転換の意味を込めて、花山さんの返事を聞かずにリモコンのスイッチを押した。
するとタイムリーなことに、今日のアイスショーのニュースが映し出された。
すぐにマスカレイドが流れて、二人してため息をつく。
……。
こうして媒体を通しても九尾は視えるし、嫌な感じはよみがえってくる。
俺は画面から顔をそらし、なんとなくベッドに移動して、目的もなくただぼんやりと携帯の電源をいれた。
そしてツイッターを開くと飛び込んでくる今日の感想の数々に、一つ一つ目を通していく。
皆さんがとても前向きにとらえてくださってる中でも、やはり完璧な演技に勝るものはないのだと強く自分に言い聞かせながら。
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鹿(プロフ) - みなみさん» 触れるとか設定は、適当なんですけどね^^まあ差別化ということで。次移行なんですけど、このままでは現実の羽生さんに追いつくので、どうしようかなーと模索中です。 (2019年7月5日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - おっと、何やらゆづがいつもと違って、ますます展開が楽しみです!狐耳、触りたい〜!!本人には見えているだけで触れないなんて、不思議ですね。 (2019年7月4日 13時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 狐耳にはあまり深い意味はなかろうと思います。ただ、二人を繋ぐものが何もなくなってしまうと、お話を進めにくいので、伏線のようなものでしょうか。でも、耳ついてるのを妄想しながら色々見返すという妄想観賞ができます。←! (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» ついつい連続で更新してしまいました。出し惜しみは絶対王者がお気に召さないので(笑)でもみなさん注目ポイントが違ってて面白いですね(*^^*)ちなみに狐さんはもう出てきません。あっさり消えました。 (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ゆなさん» 常に気になる所で終わっちゃうという(笑)後2話手前だともっと気になるかなーと思って、これでも足しておきました。たくさん更新するのは、自分が読者側だったら嬉しいからです(*^^*) (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月21日 16時