【ホテル】2 ☆ ページ26
予定通りの時間にホテルに着いたので、あらかじめ聞いていた部屋番号を何度も確かめ、その部屋の前で深呼吸する。
一応世界的フィギュアスケーターだから、変な人に尾行されていないか何度も振り返りつつ、慎重にここまで来たつもりだ。
羽生くん戻ってるかな…。
ホテルの廊下はとても静かで無駄に不安になるけど、このままボーッとしてても仕方ない。
ここは思い切ってチャイムを押す。
すると当然、ピンポーンと自宅にいるような音が響いたので、何となく身なりを整えて待つ。
まだ戻ってないかな…。
一度電話してみようかなと思っていたら、しばらくして中から扉が開いた。
少し挙動不審ぽく隙間からのぞく顔を見た瞬間、部屋を間違えてないことに安堵する。
「あ、久しぶ…」
でも私が言い終える前に一瞬扉が大きく開いて、羽生くんに無言で肩を掴まれる。
そして引きずり込まれるように部屋の中へ入ると同時に、羽生くんが後ろの扉を閉めた。
「ごめん!」
いきなり謝罪されたかと思ったら、そのまま力強く抱きしめられたその反動で、床にバックがずり落ちてしまう。
「あ、あの…羽生く、ん?」
「……。」
戸惑う私に羽生くんは何も言わないけど、きっと今は、九尾に好き勝手された身体を落ち着かせたいのだろう。
私はそっと彼の背中に手を回して、慈しむように撫でた。
「……。」
お風呂入ってたのかな…。
石鹸の香りと濡れた髪に包まれながら、しばらくじっとしていると、洋服が擦れる音と心臓の鼓動が静かな部屋によく響く。
そして羽生くんの気持ちを考えながら、私がこのままじっとしている事が、彼にとって一番のお薬なんだろうなと思う。
今はできるだけ動かずに、心と身体に寄り添ってあげよう。
「今日の演技…最悪だったでしょ。」
ふと、彼が低い声で泣きそうに呟いた。そんな意外な一面に驚いた私は、思わず穏やかに反論する。
「そんなことないよ。みんな、羽生くんを夢中で見てたよ…。」
普段とは違って、もがき苦しむスケートだったかもしれないけど、そんなファントムもいていいんだと思った。
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鹿(プロフ) - みなみさん» 触れるとか設定は、適当なんですけどね^^まあ差別化ということで。次移行なんですけど、このままでは現実の羽生さんに追いつくので、どうしようかなーと模索中です。 (2019年7月5日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - おっと、何やらゆづがいつもと違って、ますます展開が楽しみです!狐耳、触りたい〜!!本人には見えているだけで触れないなんて、不思議ですね。 (2019年7月4日 13時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 狐耳にはあまり深い意味はなかろうと思います。ただ、二人を繋ぐものが何もなくなってしまうと、お話を進めにくいので、伏線のようなものでしょうか。でも、耳ついてるのを妄想しながら色々見返すという妄想観賞ができます。←! (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» ついつい連続で更新してしまいました。出し惜しみは絶対王者がお気に召さないので(笑)でもみなさん注目ポイントが違ってて面白いですね(*^^*)ちなみに狐さんはもう出てきません。あっさり消えました。 (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ゆなさん» 常に気になる所で終わっちゃうという(笑)後2話手前だともっと気になるかなーと思って、これでも足しておきました。たくさん更新するのは、自分が読者側だったら嬉しいからです(*^^*) (2019年7月1日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年6月21日 16時