【夢短編集②】 (ページ41)

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shp…甘さに溺れる(前編) ページ41

『許せないっ!!あなたの彼氏は浮気してない??』

ふとテレビに目が行く。
画面に映るチェック項目に、なんとなく目を通す。

『スマホが常に伏せられている』

…伏せてる、かなぁ。伏せてるな。

『画面が見えないように傾けて操作している』

…してる、気がする。

『危険!!トイレやお風呂にスマホを持ち込む』

…今ショッピ君、お風呂…に持ってってる!!

え、浮気!?
嘘でしょ、そんなまさか…え、でも。
いや確かに最近よくスマホ隠すし、まずテーブルの上に置かなくなった。

「…私、飽きられた?」

もしかしてもっと若い子の方が良かったとか。
いや、信じたくない。
でもたまに画面見てニヤついてる時あるし、あれは他の子とLINEしてたりするのかもしれない。

テレビから聴こえる無情な笑い声は、まるで私を嘲笑しているかのよう。
たったいくつかのチェック項目に当て嵌まっただけで、こんなにも不安になるなんて…

「Aさん、入ります?」

だって、思い当たる事があるんだもん。

「え、なんちゅう顔してんすか。梅干しみたいな顔してますよ」

「梅…どうせ私はブスだよ!!」

「そんな意味ちゃうかってんけどな…どうしたんすか、えーっと。あ、渋い顔して」

「渋くもなるよ…ぐすっ」

「鼻炎ですか?やから早よ風呂入ってあったまった方が」

「私じゃないの!テレビ観てみなよ!!」

『♩～ﾊﾞ-ｲ、ﾊﾞ-ｲ、ｸﾞｯﾊﾞ-ｲ! ﾀ-ﾄﾙﾈｯｸﾎﾞ-ｲ!!～♩』

「…え、俺包○ちゃうし」

「ごめん、タイミングがいかんかった」

言うべきなの?ここで問い詰めるべきなの?
浮気なんてされても気づかなかったし、問い詰めるなんて事過去にした事もない。
でも、モヤモヤしたままは嫌だ。

「…浮気、してる?」

「……すいません、何て言いました?」

「ショッピ君、浮気してる?」

こんな台詞、自分の口から出るなんて思ってなかった。
改めて言葉にすると悲しすぎるし、心臓は口から飛び出しそう。
最愛の人に問う罪悪感と、最愛の人に裏切られたかもしれないと言う絶望感が私の心臓を押し潰そうとする。

「何でそんな事言うんすか、自分何かしました?」

明らかに悲しみを含み低くなった声、ショッピ君の目が見れない。
沈黙の中、無機質に流れるテレビの音が不快だ。

「…スマホ、最近よく隠すし。お風呂にもトイレにも持ってくよね」

私を応援するかのように、テレビから先ほどの浮気チェックコーナーの音声が笑い声混じりに流れ始めた。

「…あぁ、そういう」