【夢短編集②】 (ページ19)

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zm…心配症彼氏(発熱) ページ19

「コホッコホッ」

『…風邪か?大丈夫なん?』

「大丈夫。でも移しちゃいけないから来なくていいからね?わかった?」

『はぇ…』

「わかった?動画だってあるんだし、ね?」

昨日から熱っぽくて咳が出ていた。
明日はゾムとデートの約束だったけれど、仕事から帰宅して夜になっても回復はせず、寧ろ酷くなっていた。
キャンセルの電話をして、来ないようにと念を押すけど…。

『…30分で着』

「だめ!!本当…移るからっゴホゴホッ」

『━ブツッ━』

あー、来るなこれ。
どうしよう、部屋片付けなきゃ。ゾム、ご飯食べたって言ってたっけ。あ、化粧。
ぐるぐる、久々の熱に私の思考力はどんどん低下していく。

━━ ピンポーン ━━

「…え、はやっ。20分しか経ってない」

重い体をベッドから起こし、玄関の扉を開けるとタックル並に抱きつかれて思わず倒れそうになる。

「ゾムッ、ちょ…倒れる」

「ダメとか来んなとか無し」

途中走ったのか、肩で息をするくらい呼吸が乱れてるゾム。
ごめんね、心配かけたんだねと抱き返す。

「米、買ってきたから」

「…米?米ってか米袋だねこれ。重ーい」

「あと卵」

「10個入りだねぇ、食べきれないね、これね」

「あと土鍋」

「おかしいな～、二人で使うにはサイズがちょっとあれかな～?ファミリーサイズだよねこれ」

「お粥作るな!!」

「うん、デカイから!!多い!!絶対多い!!」

「食わんと治らへんで?」

「食べ過ぎても良くならないからっゴホゴホッ!!」

「A!!興奮したら熱上がるで!?」

ゾムのせいだからね!?
ぴたりと私の額に手を当てて慌て始めるゾムは、買い物袋を床に置くと軽々と私を横抱きにした。

ゆっくりとベッドに下ろされて、ぎゅう～っと抱きしめるように布団をかけられる。
ベッドからキッチンに立つゾムを眺める。
普段の子どもっぽい様子とは違って、一生懸命な姿に来てくれた事の嬉しさと有り難さを感じる。

熱のせいかぼやけてきて、変だな…涙が出てきた。

「A、食えるか?」

持ってきてくれた大きな土鍋には、きっと私の普段の食事量に合わせた少量の卵粥がちんまり。
熱々で、ちょっと薄味だけど、凄く美味しい。

「美味しいよ、ありがとう」

「ほんま?おかわりいる?」

「大丈夫、ゾム食べる?」

「大丈夫、俺今日ステーキ食べてきた」

「あ、ずるーい!!」

「治ったら行こうな?俺泊まるし、見とったるから」

「うん」

ゾムの手厚い看病のおかげで、翌朝には熱が引いていた。