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ずっと戻らずに居るのは不信がられるため、何とか平静を取り繕ってリビングに戻る。支度の終わったお母さんが私の耳に顔を寄せて、小さく呟いた。
「シャオロンくん、ちゃんと男の子だよ。2人で逃避行でもしてみたら？」
悪戯に笑うお母さんはそのまま手を振って出かけて言った。大人の狡い言い逃げだ、と憤慨したかったけれど、シャオちゃんを置いていく訳にも行かないしご飯が冷めてしまうし、声をかけて食卓に座った。
……さっきの、聞いてみても良いかな。私だけが付け上がった気持ちでいるのは何だか悔しい。
平静を装って尋ねてみるも、何だか変に畏まってしまって敬語になってしまう私の悪い癖が出てしまった。シャオちゃんも釣られて敬語になって、お互いにオチの付け所が分からないまま黙り込んでしまった。
もういっそ、聞かなかったことにしようかな。と、いつもの諦め癖が喉元まで込み上げてきた途端に先にシャオちゃんが口を開いた。
「俺と、付き合ってみいひん？」
器官に詰まった。噎せ返る喉と同時に脳内もひっくり返ったようにぐちゃぐちゃにかき混ぜられた。
俺と青春せえへん？と聞いたシャオちゃんの顔は至極真剣な眼差しをしていて吸い込まれそうになった。
頭上にハテナマークをいくつも浮かべた私にシャオちゃんはぶはっと吹き出して笑い、ひぃひぃと犬が鳴いてるような高笑いを返した。
「お前のそのたまにやるアホ面なんなん？」
『あ、アホ面とは何さ！シャオちゃんが変なこと言うからでしょ！』
「俺は真面目に言うてんねんけど。ちゃんと聞いてた？」
『せ、青春とは』
「そらもうフレッシュなパワーであれやこれやと遊ぶことよ」
待て。全く付いていけない。私はまだ、シャオちゃんが私を好いている時点から付いていけていない。重ねて付き合おうだとか青春しようだとか、色々一気に畳み掛けて来ないでほしい。
「Aは俺の事どう思ってんの」
『どうって……お、幼馴染だけど』
「せやな。あとは？」
『……あとは、と、言われても……』
「男としてはどうかって聞いてんねんけど」
なんだ、なんだ！なんなんだ今日のシャオちゃんは！
向かい合わせに座ってたのにいつの間にか食器をずらして隣に座ってるし、肘を着いて顔を覗き込んでくるのも心臓に悪い。その視線を遮って太ももの上に縮こまる自分の手を見つめながら返答に困っていると、その手すら奪われてしまった。私のより数回り大きな細っこくて筋張った暖かい手に、まるまる包まれてしまった。
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悠亜(プロフ) - すずらんさん» コメントありがとうございます！有難いお言葉光栄です……あまり派手な話ではないですがこの後もいろいろと2人の心境に変化が現れますのでそちらも是非見て頂けたら嬉しいです！ありがとうございます！ (2020年2月28日 9時) (
レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 何から言ったら良いのかわからなくて乱文になってしまうのですがコメント失礼します。好きです。心理描写がとても繊細で手に取るように分かりやすくて好きです。応援させてください… (2020年2月27日 9時) (レス) id: 14859b81d2 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - ユヅルさん» 前作からありがとうございます！前作との差分化を図るのが難しいですが、こちらもこちらで楽しんで頂けると幸いです！ありがとうございます！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - さいさん» コメントありがとうございます！中々微妙な距離感ですが、どう近付いていくんですかね。私にも分かりません。嬉しいお言葉をたくさんありがとうございます！気長にお待ちください！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
ユヅル(プロフ) - わああああ！！前の作品も見させていただいてました…！！！相変わらずの文才…ほんとに尊敬します…！！更新頑張ってください！！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: 0f65930547 (このIDを非表示/違反報告)
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