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-夢主side-
宣言通りシャオちゃんが家に来た。部活帰りにそのまま来たため荷物は多く、久しぶりに再会したお母さんが興奮して騒ぎ立てた。引っ越してきてから誰かを招いたのは初めてだな、とシャオちゃんにクッションを渡しながら思案する。自分の部屋の中に男の子が居るって、なんか不思議だな。
「……また、ねぇ?」
『ちあうんふよ、はなひて』
「何言うとうか分からんわ」
私の頬を片手で掴んで遊ぶシャオちゃんは眉を顰めてぐにぐにと弄ぶ。抵抗しても振り解けない力の強さに驚いていたら、掴んでいた手が少しだけ弱まった。
あ、離れる。そう思った瞬間、少しだけ目を伏せたシャオちゃんの顔が直前まで近付いた。
────え?
一瞬で身体が固まった瞬間扉がノックされ、ぱっと離れて何事も無かったかのようにお母さんと話し始めた。な、なんでそんな平常心なの?だって今、キスしようとしてなかった?私の自意識過剰なだけ?
お母さんが去ってもぐるぐると迷う脳内は着地点を見つけられず、頬が熱くなるのをじわじわと感じるだけ。
御手洗に席を立ってから戻ってきた時にリビングから聞こえてきた会話は、私の想像を優に超えるものだった。
「……ただの昔遊んどっただけの幼馴染が、たまたま再会しただけの友達が、人の家庭の事情に口突っ込むのも違うと思うんすけど、それでも、俺はAのこと、本当に大事にしたいんです」
「……それは、きっと友達だからってだけじゃないんでしょう?」
「はい。男としても、Aの事を大事に思ってます」
シャオちゃんの口から紡がれる言葉のひとつひとつを何とか飲み込んで理解しようとしても叶わず、ただただ脳内は混乱に満ちていた。その場で何度も回ったり、数メートルの距離を頭を抱えながらうろうろしたり、シャオちゃんの言葉を小さく口で反芻したり。都合良く解釈してしまっているのではないかと必死に否定してみても、どう捉えたって結局見つかった答えはひとつだった。
シャオちゃんは、私のことが好きだった。
未だに2人は会話を続けているが、もうその会話を盗み聞ける程の余裕は私には無く、何故か洗面所に戻って手や顔を洗うという奇行とも言える行動に出た。びしゃびしゃに濡れたまま頬から滑る水滴が顎に伝って床に落ちる。それと同時に私は床にへにゃへにゃと崩れ落ちた。
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お久しぶりです。悠亜です。
またゆったりですが少しずつ更新していきますのでよろしくお願いします。
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悠亜(プロフ) - すずらんさん» コメントありがとうございます!有難いお言葉光栄です……あまり派手な話ではないですがこの後もいろいろと2人の心境に変化が現れますのでそちらも是非見て頂けたら嬉しいです!ありがとうございます! (2020年2月28日 9時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 何から言ったら良いのかわからなくて乱文になってしまうのですがコメント失礼します。好きです。心理描写がとても繊細で手に取るように分かりやすくて好きです。応援させてください… (2020年2月27日 9時) (レス) id: 14859b81d2 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - ユヅルさん» 前作からありがとうございます!前作との差分化を図るのが難しいですが、こちらもこちらで楽しんで頂けると幸いです!ありがとうございます! (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - さいさん» コメントありがとうございます!中々微妙な距離感ですが、どう近付いていくんですかね。私にも分かりません。嬉しいお言葉をたくさんありがとうございます!気長にお待ちください! (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
ユヅル(プロフ) - わああああ!!前の作品も見させていただいてました…!!!相変わらずの文才…ほんとに尊敬します…!!更新頑張ってください!! (2020年1月19日 18時) (レス) id: 0f65930547 (このIDを非表示/違反報告)
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