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胸が、ざわめく。周囲を囲う木々が強風に煽られて繽紛の如く揺らめくように、静かな海が白波を立てて轟々と荒れるように、ほんの少しの恐怖心と狼狽を抱えて胸騒ぎを起こしている。
「名前なんて言うんだろうなぁ」
「次見かけたら俺にも教えて」
「……お前ら飢えすぎちゃう」
どうか、Aのことじゃありませんように。思春期真っ盛りの男子高校生は仕方ない、仕方ないけど、俺も分かるけど、この下卑た視線がAに向けられるのは何か耐えられへん。
Aのこと知っとうのは、俺だけでいい。
「──おいお前らいつまで起きてんだ！就寝時間過ぎてるぞ！」
「やっべ、すいませーん今寝まーす」
「もう寝てまーす、寝言でーす」
「先生ロボロくんがシコってまーす」
「シコってへんわ！！殺すぞシャオロン！」
見廻りの先生が入ってきて慌てて布団を被る。電気を消されるも、各布団の中からくすくすと笑い声が漏れる。時間が経過するにつれて続々と寝息が上がり、寝返りを打つ度に布擦れの音だけが広々とした部屋を支配した。
…明日も明後日も、誰もAの事を見つけなければええのに。
そんな邪な事を考えては青息を出す。普段と違う固い枕に頭を埋めて目を閉じる。
目蓋の裏に浮かんだのは、看板の裏で体育座りをして涙を零すAと、満員電車の中で俺の腕の中に収まるAの姿。
どちらの姿を見ても、大切な友人であることには変わらへん。変わらへんけど、違う感情が蠢いた気がしたのは、きっと気のせいじゃない。
結局殆ど寝付くことなく朝を迎えてしまった。夜中とは裏腹に眠たい目を擦って静かに朝食を食べる面々を見て、「野球部の朝練よりしんどそうやな」とロボロが笑った。
着替えて2日目のレクの場所に移動する。班の男女1人ずつが鬼役になるらしく、適当にジャンケンで決めた。綺麗に男女で別れ、隠れる側になった俺とロボロは小走りで建物の中を駆けた。
「お前チビやから一生見つからんやろうな」
「そうや？鬼の目の前堂々と歩いたるからな」
「うはっ、開き直んな」
2人で隠れると見つかる可能性が高いため、適当な場所で別れる。にんき、いや、人気の無い倉庫のような場所に入ると、埃臭いかと思いきや案外綺麗に掃除されていた。
ごちゃごちゃと物が敷き詰められている床を軽々進み隅っこのロッカーの傍に向かうと、ごそりと人影が動いた。
幽霊でも居るのかと身構えると、その人影が揺らりとこちらを見た。
『……シャオちゃん？』
「……A」
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悠亜(プロフ) - すずらんさん» コメントありがとうございます！有難いお言葉光栄です……あまり派手な話ではないですがこの後もいろいろと2人の心境に変化が現れますのでそちらも是非見て頂けたら嬉しいです！ありがとうございます！ (2020年2月28日 9時) (
レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 何から言ったら良いのかわからなくて乱文になってしまうのですがコメント失礼します。好きです。心理描写がとても繊細で手に取るように分かりやすくて好きです。応援させてください… (2020年2月27日 9時) (レス) id: 14859b81d2 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - ユヅルさん» 前作からありがとうございます！前作との差分化を図るのが難しいですが、こちらもこちらで楽しんで頂けると幸いです！ありがとうございます！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - さいさん» コメントありがとうございます！中々微妙な距離感ですが、どう近付いていくんですかね。私にも分かりません。嬉しいお言葉をたくさんありがとうございます！気長にお待ちください！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
ユヅル(プロフ) - わああああ！！前の作品も見させていただいてました…！！！相変わらずの文才…ほんとに尊敬します…！！更新頑張ってください！！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: 0f65930547 (このIDを非表示/違反報告)
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