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『……あの、ちょっと、長い』
「っ、わり、つい」
赴くままに抱きしめてしまったAを離すと、林檎のように頬を赤らめ恥ずかしそうに目を逸らされる。前髪を弄りながら顔を隠すも、真っ赤に染まった耳も全て丸見えだ。かく言う俺も赤面しとるやろうし、顔に汗すらかいた。
『シャオちゃん今彼女とか居るの？』
「え？居らんで」
『随分手馴れてるじゃん』
揶揄うような口振りをするAに、お前だからや、と口から思わず出そうになった言葉を無理やり抑え込む。……俺は何を言いかけてんねん。ちゃう、こいつと小さい頃は何も考えんと手ぇ繋いだり抱きしめ合ったりしとったからや。
『どうしたの？』
「……何もない、帰ろうぜ」
『？うん』
……なら、今は？
「長時間のバスって腰いわすよな」
「あと1時間くらいやっけ？やっぱ山やから遠いなぁ」
林間学校へ向かうバスの中。長時間の移動に音を上げたロボロと談笑する。どんどん都会の喧騒から離れ行く景色を楽しむ、なんて風情のあることはせず現代っ子らしくソシャゲを開く。
あれから、Aと会う機会はない。校内ですれ違えば挨拶はするものの俺は部活の練習もあって帰るのが遅く、駅で会うこともない。
連絡も毎日はしてへんし、休日に遊ぶこともない。
「──シャオロンはさぁ、昔はAちゃんのこと好きやったん？」
隣に座るロボロからふと口にした言葉に動揺し、口に含んだレモンティーを盛大に零す。カーディガンの袖で濡れたスラックスとiPhoneの画面を拭うと、「おい俺にもかかったやんけ！」とロボロから抗議の声が上がる。声でかいねん。
「な、何やねん急に」
「よく聞く話やん。幼馴染が初恋の相手って」
俺は幼馴染男しか居らんからなぁ、と俺と同じく撥ねた水滴を拭うロボロは、本当に興味が有るのか無いのか片手ですいすいとソシャゲに勤しんでいる。
「……好き、やったんちゃう」
「何で分からへんねん」
「小学生の恋って曖昧やん」
「へー」
「あぁ、ごめん。お前には分からへんわな」
「やかましわ！」
恋愛経験の無いロボロを揶揄い、未だ到着地に着かないバスの後方の席で思案する。小学生の頃は今とは違う感情で動いとう生き物やし、如何せん小学生男子はアホの塊や。少し優しくて揶揄い甲斐があれば簡単に「好きや」と勘違いする。
それでも周囲から両思いやと野次られた時に自惚れた情動と、俺に好意があると気付いた時の照れ隠しは、確かに恋やったと思う。
Aは、俺の初恋やった。
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悠亜(プロフ) - すずらんさん» コメントありがとうございます！有難いお言葉光栄です……あまり派手な話ではないですがこの後もいろいろと2人の心境に変化が現れますのでそちらも是非見て頂けたら嬉しいです！ありがとうございます！ (2020年2月28日 9時) (
レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 何から言ったら良いのかわからなくて乱文になってしまうのですがコメント失礼します。好きです。心理描写がとても繊細で手に取るように分かりやすくて好きです。応援させてください… (2020年2月27日 9時) (レス) id: 14859b81d2 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - ユヅルさん» 前作からありがとうございます！前作との差分化を図るのが難しいですが、こちらもこちらで楽しんで頂けると幸いです！ありがとうございます！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - さいさん» コメントありがとうございます！中々微妙な距離感ですが、どう近付いていくんですかね。私にも分かりません。嬉しいお言葉をたくさんありがとうございます！気長にお待ちください！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
ユヅル(プロフ) - わああああ！！前の作品も見させていただいてました…！！！相変わらずの文才…ほんとに尊敬します…！！更新頑張ってください！！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: 0f65930547 (このIDを非表示/違反報告)
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