10.犬神の潤/N ページ11
｢初めまして、二宮和也君｡
俺は犬神の潤｡
今からお前は俺に食われるの｡
百鬼夜行を成功させるため、俺が物の怪達の頂点に立つ為に、ね｡｣
秀麗な笑みを浮かべる潤君の口元には、人間のソレとはまるで違う大きな牙が覗いてる｡
白銀に輝く狼の尻尾のようなものがいつの間にか現れて
オレの腰を撫でていく……｡
｢え…、ちょ…ちょっと、えっ…、なんな、の…？｣
聞こえる筈なんてないのに｡
庭にある大きな欅の葉擦れの音が聞こえて
ひとりでに店の木戸が閉まったと思ったら
さっきまでと様子が変わった翔さんが
潤君に押し倒されてるオレを見て笑ってた｡
｢潤、お前気が早いなぁ｡
昨日おれがニノの話した途端、食いに行くって聞かないんだもん｡｣
翔さんはさっきまでのダークのスーツ姿じゃなくて
黒に赤の合わせの着流しスタイル｡
いつの間にか伸びた栗色の髪を、小さな鈴のついた組紐で女の子みたいに
ポニーテールにして縛ってる｡
『
時代劇で悪役のお代官様が咥えてる、昔の煙草を吸って白い煙を吐き出していた｡
｢ごめんねぇ、ニノ｡
ニノって
いつも守護者の強烈な妖気纏ってるからさぁ｡
迂闊に手ェ出したらヤバいのに｡
ニノのこと潤に話した途端これだもん(笑)
ホント若いって勢いだけで行動できるから羨ましいよ｡｣
守護者？
百鬼夜行？
犬神だのオレを食うだの、さっきから全然ワケ分かんない｡
｢ちょ、ホントにちょっと待ってよ!!
さっきから一体なんのこと？
オレが…なんだっけ？
櫛…なんとかってお姫様って一体どういうことなの!?｣
潤君に組み伏された格好で喚いたオレに、翔さんは呆気にとられたような顔をした｡
｢え…、なに？
ニノってば自分がどういう人間か、全然分かってないの？
じゃあ…どうやってこれだけの妖気を放つ物の怪を守護者にしたの？｣
｢いいよ、そんなことどうでも!!
俺達物の怪にも、絶大な妖力を与えてくれる｡
どいつが守ってたかなんて関係ねぇ…!
ようは先に食ったモン勝ちってことだろ？｣
大きく口を開けた潤君の口元から覗く白い牙が、あやしく煌めいた｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
