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渋々伏黒くんの後を着いていき、古いアパートにたどり着く。入れよ、と言われ恐る恐る足を踏み入れるとこじんまりとした小さな一室だった。
「座ってろ、会わせたい人はもうすぐ来るから」
小さなテーブルの前に座る。ちらりと前に座る伏黒くんを見ると携帯をいじっていた。今までろくに話したこともないのに、家にまで連れてこられて緊張するなという方が無理な話である。しかも会わせたい人の説明もないまま。
かちかちと掛け時計の秒針の音が鳴り響く。何か話したいけれど、話しかけるなオーラみたいなものが目の前の彼から出ているようで、口を開くことが出来ない。
帰りたい。
会わせたい人はもうすぐ来るからといって、15分程経った。ずっと無言のまま。
「チッ」
目の前の彼から突如聞こえてきた舌打ちにビクッと肩を揺らす。恐る恐る彼を見るとこちらを睨んでいた。
「怖がんじゃねぇよ、気持ちわりィ。つーかさっさと来いよあの人も」
「ご、ごめ」
反射的に謝ろうと私が口を開いた瞬間だった。
「恵〜!!!おまたせ〜!!」
玄関のドアがバンッと鳴ると同時に今までの空気をぶっ壊すような明るい声が聞こえた。玄関のほうに目を向けると、白い髪、サングラス、黒い服を着た見るからに怪しい男。
「ひっ」
「あ、この子が呪霊と感覚を共有する子?」
長い足で私の元までズカズカと来て、座っている私の顔近くに男はぐいっとその頭を下げる。サングラスの隙間から青い瞳が見えた。
そのままじっくりと私を見る。息が詰まるようで、私はその人から目が離せなかった。
「ははっ、恵が女の子紹介したいっていうから来てみたけど。なんか大人しそうな子じゃん」
「五条さんその言い方だと語弊があります」
「ごじょう…?」
「あぁごめん。僕五条悟。恵の後見人で呪術師ね」
「こうけんにん、じゅじゅつし……」
「君話せないの?さっきからオウムみたいに繰り返してばっかりだけど」
「五条さん、Aは何も知らないって言いましたよね」
はぁ、と伏黒くんは深いため息をつく。
「何も知らないまま祓ってたんでしょ、うけるよね」
「うけませんよ」
「君、名前は?」
よっこいせ、と五条さんは私の前に座る。長い足が邪魔そうに折りたたまれる。
「A、Aです……」
「Aね」
急に下の名前で呼ばれる。この人はなんというか、少し変わっている、というより読めない人だと思った。
「そんな怯えないでよ、恵の頼みだ。僕が教えてあげる」
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時