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「いや、深い意味は無いよ。ただ確認したくて」
「……」
Aは一度ゆっくりと息を吸った。
「……呪霊で苦しむ人がいるなら、減らすまでです。私にはそれしか出来ないから」
それが私の存在意義だから。呟いた小さな声はまるで自分に言い聞かせるようにAの喉の奥へ落ちていく。
Aの思いを否定するつもりは毛頭ない、彼女の考えは清廉潔白とも言えるし、ある種聖女のような清らかなものだ。けれどその清廉さはほんの少しの悪意で一瞬にして汚れる可能性がある。そこが彼女の危うさであった。
その心のまま死ぬことができるならそれは高潔なことであるし、呪術師冥利に尽きるというもの。しかし人間は脆く不安定である。背中を押され、落ちていく人間を知っていた。弱気を助け強気をくじく、そう言っていた正しさの指針。
胸の奥のざわつきを沈めるように目の前のAの瞳を見つめる。黒い瞳はどこか彼に似ていた。その術式も、立ち位置も、まるで。
「負の感情はなくならないって恵に言われなかった?」
「……言われました、けど」
彼女は白く柔らかな指をたたみ、拳を小さく握る。体の中の光たちがきらりと一瞬輝きを増す。
「私に出来ることはそれしかないんです。単純な算数だって、恵くんにも言いました。負の感情は人間がいる限り無くならないけど……」
人間がいる限り負の感情は生み出される。負の感情がない、というのは理想の世界とも思えるが『負の感情を生み出す存在がいない』ということも当てはまってしまう。それはつまり、非術師のいない世界。
Aが間違った方向に進んでしまったとき彼女は強大な負の感情を抱えてしまう。正義や善と表裏一体の、感情をもつ人間そのものを滅ぼす存在として。今の彼女が、そこまで行き着いてはいないと思うが。もしそうなってしまったとき彼女は祓われなければ、殺されなければならない。それが彼女の理想とする世界であっても。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時