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授業を終え、部活動に向かう生徒たちの喧騒の中をとぼとぼと静かに歩き校舎を後にする。家への帰り道、ふと足元から顔をあげると視線の先に目立つ白い髪が見えた。一瞬自分の足は止まったけれど、迷わずそちらへ向かう。近づくとサングラスの隙間から覗く青い瞳が私を捉えて、彼の口元がにやりと小さく弧を描く。「やぁ」と軽く片手をあげて、私に挨拶をする彼に小さくお辞儀をした。
親はまだ仕事をしている時間だ。家には誰もいないはず。そう思って私は五条さんを家にあげた。長い足を窮屈そうに畳んでリビングに座る五条さんの目の前に冷えた麦茶を出す。からん、と氷が溶ける音が静かなリビングに響いた。目を引くような風貌をした彼にただの麦茶が似合うとはお世辞にも言えない。それでも五条さんは「ありがと」といって冷えて汗をかいているグラスに口をつけた。
「突然だけど」
そう口を開いて五条さんは麦茶から私に視線を向ける。青い宝石のような瞳に吸い込まれるようだった。
「最近どうかな、順調?」
目の前の彼は人当たりのいい優しい笑顔を浮かべている。
「まぁ、そうですね。特には……」
順調、というわけでもないが別段困っていることもないから、曖昧な返事を残す。彼にとってその返事は容易に想像できた答えだったのだろう。彼は小さく笑っていた。けれど。
「……体に違和感とか、変なことは起きてない?」
そう聞いた五条さんはそれまで浮かべていた笑顔をわずかに崩した。どこか怖さを纏ったような、少し冷たい声に私は無意識に体に力が入る。私を見つめる青い瞳から逃げるように五条さんの目の前にあるグラスに視線を向ける。グラスに沿って垂れた水がテーブルに溜まっていた。
別に体は問題なく動くし、呪霊だって問題なく祓えている。別段代わりはない。……胸の奥が冷えたあのときの感覚は、五条さんのいう『変なこと』ではない。関係ない。間違ってない、私は……。
「……いえ、別に何も、変わりありません」
ほんの少しだけ、喉の奥が震えた。からん、と再び氷が溶ける。
五条さんは私の言葉に「そう」と静かに呟いた。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時