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Aを家の前まで送り、五条さんが運転する車は動き出す。後ろへと流れる道はポツポツと街灯が付き始めている。街灯を通り過ぎるたび窓に映る自分の顔が一瞬映る。無意識に眉間にしわがよっていた。


「恵、Aとはうまくいってる?」

「……そう見えますか?」


バックミラーに映る五条さんはふっと笑った。


「前よりは歩み寄ってるように見えるけど?」


無意識に小さくため息をついていた。歩み寄っている、か。確かに雨が降っていたあの日、家に上げてAの意思を確認した時から、以前よりAとの距離が縮まった気がする。というよりAの解像度が上がった、という表現の方が当てはまるのかもしれない。彼女が何を考え、何のために呪霊を祓うのか。全てを理解することなんて出来ないがAの根幹を知ったような、そんな気がした。目の前の運転手はどこまで分かっているのか、読めない男だ。


「……あいつは、いずれ自分が呪霊になってもそれまでに沢山祓えばいい、って言ったんですよ」


単純な算数だと。あいつの意思は固い。固いというよりも鉛みたいに重いものだ。それはいわゆる自己犠牲。


「呪霊に取り込まれるって、あいつは覚悟してる」


自分が巻き込んだのに、その罪の意識を塞ぎ込む。その罪を、Aが呪霊を知らぬまま危ない目に遭わないようにと自分勝手にこちらの世界に引き込んだことを見ないようにして、あいつの覚悟に乗っかって。あまつさえ先輩面して。『自分の意思を忘れるな』そう言った。任務が終わったあとのAのぼんやりとした瞳を見て声をかけずにはいられなかった。Aが飲み込まれないように。……あがいているのは俺の方だった。


五条さんはバックミラー越しに俺を一瞬捉える、がサングラスをかけた彼の瞳は何を思ってるか分からない。けれど何か考え込むように「そうか」と小さく呟いた。俺はそれから何も言えず、また暗くなりつつある外を見つめた。

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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません‪‪💦‬ (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時

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