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「そーいえば最近Aさん、伏黒くんと絡んでないよね」
「立場が分かったんじゃない?」
「やば、立場って。上から目線すぎ」
「好きじゃないならでしゃばんなって話じゃん」
ははは、と彼女たちにとっては楽しそうな笑い声が図書室に響く。本棚の隙間からちらりと視線を向けると本を読んでいた人や宿題をしていた人たちは彼女の方を静かに向いて、また視線を落とした。それを悟ってか彼女達の声は少しだけ小さくなる。
「Aさんってお人好しっていうか、……いい子ぶってるっていうか、何なんだろうね」
「……気に入られたいんじゃないの?」
「クラスのヤツらに良いように使われてるって分かんないもんかな」
「分かっててやってたらヤバすぎでしょ、承認欲求?」
「あー、有り得る」
じく、と胸の奥が僅かに熱くなる気がした。
「図書室は話をするところではないですよ」
ふと声が止む。図書委員が私語をする彼女たちに注意したのだ。彼女たちはバツが悪そうに図書委員から目を逸らし各々が席を立つ。また再びガラリと大きな音を立ててドアが開き彼女たちは図書室を出ていった。ドアが閉まると図書室は一気にしんとした空気になる。私ははぁ、と静かに息を吐いて持っていた本に視線を落とした。
彼女達の声が耳に残る。自分は悪いことをした訳ではないのに、胸が重苦しい。私に対してお人好しだとか、いい子ぶっていると言っているのは彼女たちだけじゃない。それは分かっていたし、言われたとしても私は誰かに必要とされていればそれが自分の幸せであると思っていたから、さほど気にするものでもなかった。しかしいざ実際に影で言われている場面を目の当たりにすると、やはり心に負担はあるようだ。
自分の荷物がある席に着き、本を開くがどうにも文字が入ってこない。立場、と彼女たちは言っていた。クラスの中心人物である彼女たちと、怖いけれど凛として周囲からも目立つ存在である恵くん。そして私。彼女たちから見れば、いやクラスの誰が見ても恵くんの隣に立つ人物は私では無いんだろう。そこまで考えてぱたりと本を閉じた。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時