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「Aさん、放課後の掃除変わってくれないかな?」
中学一年生の春。
ホームルームが終わって、帰ろうとした時。クラスメイトの女の子から声をかけられた。
「ほんとうにお願い!」
「いいよ」
「ありがとう!」
女の子はそういうと、カバンを持ち颯爽と廊下に出る。
「掃除いいの?」
「大丈夫、大丈夫!Aさんってそういうの好きそうじゃん」
「うわひど」
廊下からそんな声が聞こえて、クラスメイトの女の子は友達と帰って行った。
ロッカーから箒を取り出す。徐々に人が減っていく教室。隅っこから掃除を始めた。律儀に掃除をするのは私だけのようだ。
「Aちゃん、嫌なことは嫌って言った方がいいよ」
残っていた他の女の子が私に話しかける。その子の方をみて私は笑いかけた。
「嫌じゃないから、大丈夫だよ」
「……ふーん。Aちゃんって変わってるね」
「そうかな」
「まあいいや、私も帰ろ。じゃあね」
「ばいばい」
友達と呼べる人はまだ出来ていない。小学生の頃から私は友達が少ない。友達と言うより、皆とは付かず離れず一定の距離を保っていた。私にはみんなに見えないものが見えているから。みんなは知らない、この学校にもへんな生き物はいるんだよ。
誰もいなくなった教室には私の箒の音だけが響く。
それ以降、私はクラスメートからいろんなことを頼まれるようになった。きっとクラスの中で私は頼めばなんでもやってくれる、そんな便利な人という位置付けになったんだろう。
頼まれるのは、嫌ではなかった。
クラスメートがそれで嬉しいなら。
小さな頃から触れてきた苦しい感情は、私の中で少しずつ少しずつ蓄積されている。だからこそ、目の前の私を頼る人が、私が代わりになってそれで嬉しいと思ってくれるなら。それが私のある種の救いになっていた。
これお願いと頼んでくるクラスメイト。
いいよ、というと「ありがとう」と笑って返してくれる。
たとえそれが私を便利な道具だと思っていても。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時