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雨音は2人を包んでいた。雨の匂いが一層濃くなっていく。心臓は嫌な音を立てていた。
少し前を歩く彼の髪は湿気のせいかいつもより重そうだ。私に話しかけてきたのに、何も言わず私の前をゆっくり歩いている。広がる傘のせいで彼との距離は遠く感じる。彼の歩いている道は彼の家の方へ向かっていた。
「……伏黒くん？」
どうにも我慢ならなくてついに私から声をかけた。雨粒にかき消されるほどの小さな声だったけれど彼には届いたらしい。肩を一瞬ぴくりと揺らして、動かしていた足を止めた。彼は振り向かない。
「……わりぃ、けどこのまま」
彼は静かにそう言ってまた足を進める。何も言い出すことは出来なくて、私はそのまま彼の後を追いかけた。
「上がれよ。今、誰もいないから」
伏黒くんが立ち止まったのは彼の家の前だった。彼の歩く道から察してはいたが、またお邪魔することになるとは思ってもみなかった。
「え、」
「いいから。外じゃ誰に見られるか分からないだろ」
伏黒くんは鍵を取り出してドアノブに手をかける。彼のその一言が、彼なりの優しさから来るものだとようやく私は理解した。外で伏黒くんと2人で話していたらまたクラスメイトに何か言われるから避けたかった、ということ。
「……ありがとう」
小さくそう伝えたけど彼に届いたかは分からない。伏黒くんはそのまま玄関のドアを開け、家の中に入っていった。私もまた彼に続く。ドアを閉めると先程まで頭の中に響いていた雨音はぱったりと止んだ。
リビングに足を踏み入れる。前に来た時は五条さんを紹介された時だ。あの時は空気が重すぎていたたまれなかったことを思い出す。あの時ほどじゃないけれど、今の空気もなかなかだ。「昨日のこと」話しかけられた時彼はそう言っていた。関係ねぇだろうが、と言った彼の冷たい声が頭をよぎる。無意識にぎゅっと私は手のひらを握っていた。
私服に着替えた伏黒くんがリビングの扉を開けた。手にはタオルを持っている。そのまま彼は私に近づいて手に持っていたタオルを差し出した。
「拭けよ、濡れてんだろ」
「え、あ、ありがとう……」
おずおずとそのタオルを手に取る。傘をさしていても肩は濡れていた。借りたタオルで濡れた所を拭き取る。
「洗濯して返すね」
「いい、別に」
彼はそう言って濡れたタオルを回収した。さっきから伏黒くんの優しさがちくちくと突き刺さるようだ。だから余計昨日のことを思い出してしまう。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます！凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…！私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね！ (2022年10月3日 8時) (
レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか？ (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます！他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで！本当にありがとうございます！嬉しすぎて転げ回ってしまいます…！不定期更新になりますがこれからも頑張りますね！ (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…？本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛形 | 作成日時：2022年1月26日 19時
