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夕方教室を出る。廊下は雨のせいか、ひやりと肌を震えさせる。少し肌寒かった。外は雨が今も降り続いていて、ざあざあとアスファルトに雨のぶつかる音が響く。空は朝に増してどんよりと曇っていてなんだか少し嫌な予感がした。
授業が終わると伏黒君は静かに教室から居なくなろうとしていた。一瞬、私の方をチラリと見たけれど、何も言うことはなく、そのまま教室から姿を消した。きっとあの呪霊を1人こっそり祓うつもりなんだろう。
外靴を履いて傘を取り出す。ぼつぼつとビニールに当たる雨粒の音は激しく頭の上から降りかかっていた。
「あ、伏黒くん」
クラスメイトの女の子の声が聞こえた。
女の子の視線を辿ると、伏黒君は少し俯きながら傘をさしてこちらに足を進めていた。きっとクラスメイトの女の子も伏黒君も私の存在を気づいてはいない。
「伏黒くん、これから帰るの?」
クラスメイトは伏黒君に駆け寄ってかわいい声でそう話しかけていた。傘をさした2人は、少し距離が開いている。迷惑そうに彼女を見る、彼は少し疲れているような表情をしていた。
2人がこちらに近づいてくる。私は目を合わせないように、そのまま校門を目指して足を進めようとした。けれど、
「A」
呼び止めたのは伏黒君だった。
パシャパシャとアスファルトに溜まる水が跳ねる音。伏黒君は私の方へ近づいていた。
「この前のこと、少しいいか」
雨音は私と伏黒君の声だけを残して、他の音なんかかき消すように降りかかる。
隣に立つクラスメイトの彼女は怪訝そうな顔で伏黒君を見上げた。
「ねぇちょっと伏黒君!」
高くて、女性らしい声。伏黒君は見上げる彼女にチラリと一瞥して、少し眉を寄せた。
「俺は今、Aと話してるんだ」
そう、強い口調で言った伏黒君は少し苛立ちをはらんでいるようで、彼女はそれを察したのか肩をこわばらせた。もう知らないっ、と言いながら彼女は降りしきる雨の中、1人踵を返して去っていった。去り際、私の瞳と彼女の瞳が一瞬重なる。雨を映したような瞳の中に、鈍い光が混ざっているようだった。
「悪い、ついてきてくれ」
私が彼を見上げると、伏黒君はさっと目をそらした。私とは目を合わせたくないのかもしれない。ふとそんな考えが頭をよぎって、少しだけ胸がぎゅっと締め付けられるような気がした。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時