可愛くねぇ奴。 (ページ10)

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____あのっ、

「？！」

心臓にヒヤリとした汗が伝う。

ゆっくりと振り返ると、………岸さん
あなたが携帯を手に、そこに立っていた。
大きな目を、さらにまん丸にしたあなたが。

『…すみませんっ、俺もここで電話しようとしてて、その…』

半階分上がった踊り場に、とんでもなく気まずそうな、申し訳なさそうな顔をして立っているその人に近づく。

階段を1段ずつ上がるたびにカツン、カツン、とヒールの音が反響する。

目の前で立ち止まり、携帯を握る自分の手に目をやった。

「何の電話か分かってしまいましたか？」

『……ホステスさん、なん、ですか』

あぁ、ついにバレてしまった。
入社してから1度もバレたことなんてなかったのに。

「…お手数おかけして大変申し訳ありませんが、誰にも言わないでいただけますか？」

私は、いつもの私の顔になれているだろうか。
ポーカーフェイスを貫けているだろうか。

『あ、はい、それはもちろん…』

でも、と岸さんは続ける。

『どうして…そのお仕事、を、…されてるんですか…？』

岸さんは小さな声で、そう聞く。
そんな彼に私も小声で返す。

「…教えます。なので今度ご飯でも行きましょう、ここでは言えませんので。」

『はい…分かりました』

「…では仕事に戻ります、お先に失礼しますね」

今度こそドアノブを捻る。

デスクに戻りながら胸に手を当てると、大きく波打っていた。
心地は良くない。

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