可愛くねぇ奴。 (ページ47)

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「源氏名さん、煙草吸ってもいいですか？」

「えぇ、もちろん」

ベッドの上で朝を迎えて、大きな大きな窓から柔らかい朝焼けが見える。

昔と変わらない柄の箱を取り出して１本咥えた彼は、ライターの火でその先を炙った。

「ねぇ、源氏名さん？」
「？」

咥えたまま首を傾げる彼に下着のまま近づき、膝の上に跨る。
そのまま私は彼の咥えた煙草を人差し指と親指で摘んで奪った。

そして奪った煙草を咥え、煙を身体に流し込んだ。

上を向いて、天井に向かって煙を吐けば
彼が私の喉に指をツーっと滑らせる。

「源氏名さんえっろ…」

彼の膝に跨り、見下ろす私の目は、きっと相当冷たいだろう。

もう1度咥え、口に煙を含み、彼深い口付けをする。
それに応えるように彼も舌を動かした。

彼との間には、もう2度と思い出したくもない煙草の香りで溢れた。

指で挟んだ煙草が煙を立てている中、私はそのトロンとした顔に全てを突き付ける。

「ねぇ…？」

「ん？」

「元カノとシタ気分はどう？」

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「ぇ……？」

源氏名さんどうしたん？と何が何だか分からないと言った顔で私の頭を撫でる彼。

「捨てた女に縋ってる気分はどう？」

「待って何を言うてるん…？
誰と間違えてるん…？
源氏名さんと付き合ったことないで…？」

こいつは根っからの浮気性なのだ。

抱いてもなお、
こいつは、
私のことなんて、
思い出すことはなかった。

「AA。それが私の本当の名前。」

「っ、？！」

「思い出した？廉」

最後に思い切り煙を口に含んでから、灰皿で短くなった煙草を潰した。

先ほどのようにキス寸前まで顔を近づけ、ニタリと口角を上げた。すると口から漏れる煙が彼の顔にかかる。

そしてまた、私は口付けをした。

呆然と目を見開いて私を見る彼の膝から降り、私は服を着る。

コートも着て、鞄も持って、ヒールも履いて。

呆然として動けないでいる彼の前に立ち、見下ろした。

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